戦略ファシリテーター
事例で整理約3分

新規事業は「伸びる市場」から考えない。5ステップで整理してみた

従業員80名の物流会社から「物流DXの市場が伸びているので、新しいSaaS事業を立ち上げたい」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は市場の成長率から、既存顧客のどの手間を減らせるかへ移っていきます。

「物流DXの市場が伸びています。うちもSaaSを立ち上げたいんです」

物流会社の事業責任者の方から、こんな相談をいただきました。従業員は80名。自社で配車と配送の管理を続けてきた会社で、取引先にも中小の物流会社が多くいます。

市場が伸びているのは、そのとおりでした。ただ、話を聞いていくと、誰のどんな困りごとを解くのかが決まっていません。自社が勝てる理由も、まだ言葉になっていませんでした。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、考える順番そのものが変わっていきます。

STEP 01:ビジョン・目的・目標

目的を「SaaSを作る」に置くのをやめました。代わりに「既存顧客の配車・配送管理の非効率を解消し、3年で新規事業の売上1億円」と置き直しています。作るものではなく、誰のどんな状態を変えるのかを先に決めました。数字の目標も、金額だけでなく期限とセットにしています。

STEP 02:現状分析

既存のお客様への聞き取りから始めました。分かったのは、困っているのは機能の不足ではない、ということです。複数のシステムに同じ内容を二重に入力していること。そして、これまでに入れたシステムが現場に定着していないこと。この2つが実際の負担でした。一方で自社には、現場の運用を知っている強みと、既存の顧客基盤があります。

STEP 03:戦略の方針策定・確定

汎用のSaaSを作って大手IT企業と正面から競う道は選びませんでした。中小の物流会社に対象を絞り、現場への定着支援まで含めて提供する形に決めています。売るのはソフトウェアではなく、業務改善そのものです。自社の現場知見が効く場所に、対象を寄せました。

STEP 04:実行計画の策定

機能を作り込む前に、まず5社に試してもらいます。使い続けてもらえるかを確認し、そこで標準の機能を確定させ、価格を検証してから本格的な販売に移ります。この順番を変えないことが重要です。作ってから売り先を探すのではなく、払う意思があることを確かめてから作ります。

STEP 05:実行方法・振り返り方法

見る数字は、試験導入の社数、継続率、月額単価、導入までの期間、現場での利用率、粗利です。数字が伸びないとき、機能を足すという判断はしません。対象とするお客様か、提供する価値のどちらかがずれている、と考えて見直します。

最初に作るのは、プロダクトではない

新規事業では、市場の成長率がそのまま参入の理由になりがちです。けれども、市場が伸びていることは、自社が勝てる理由にはなりません。伸びている市場ほど、資金も人も多い相手が先にいます。

最初に作るべきなのは、プロダクトではなく仮説です。誰の、どんな課題を、なぜ自社が解けるのか。この3つがつながっていれば、対象を絞っても事業は成立します。つながらないまま開発を始めると、機能を足し続けることになります。

出発点は「伸びる市場で、新しい事業をやりたい」でした。5つのプロセスを通ると、決めるべきなのは参入するかどうかではないと分かります。既存のお客様との接点と、自社が持っている知見。そのどちらも使える場所はどこか。そこまで含めて事業を設計することです。

実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。

対話を重ねるうちに、作るものより先に決めておくべきことが、はっきりしてきました。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

戦略コンサルの思考プロセスを、365日24時間、AIで。経営から、営業・DX・人事・組織まで。現状分析・戦略方針・KPI・実行計画・振り返りまで、ひと続きで。