戦略ファシリテーター
事例で整理約3分

一律10%値上げの前に。価格戦略を5ステップで整理してみた

部品メーカーから「原価が上がったので、とりあえず10%値上げしたい」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点はいくら上げるかから、どこで価値を分けるかへ移っていきます。

「原価が上がったので、とりあえず10%値上げしたいんです」

部品メーカーの経営者から、こんな相談をいただきました。原材料も人件費も上がり、利益率が下がっている。全商品を一律で10%上げる案が、社内で検討されていました。

一律であれば、決めるのも伝えるのも簡単です。けれども、値上げを受け入れてもらえるかどうかは、商品ごとにもお客様ごとにも違います。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、決めるべきことが変わっていきます。

STEP 01:ビジョン・目的・目標

目標を「一律10%値上げ」から、「営業利益率を3ポイント改善する。ただし重要なお客様との関係は維持する」へ置き直しました。**2つ目の条件を先に置いたことが効きました。**利益率だけを目標にすると、いちばん条件の厳しいお客様から離れていきます。守るべき取引先を先に決めておけば、どこで利益を取り戻すかを設計できます。

STEP 02:現状分析

お客様別と商品別の粗利、競合の価格、他社に替えられる可能性、納期、品質、特注への対応、これまでの価格改定の記録を並べました。分かったのは、値上げを受け入れてもらえる余地に大きな差があることです。短納期や特注で応えている商品ほど、替えが利かない。逆に、標準品は価格で比べられていました。

STEP 03:戦略の方針策定・確定

一律の値上げをやめました。標準品、短納期、特注、小ロットで価格の体系を分けます。そのうえで、この変更を「値上げ」ではなく「条件をはっきりさせること」として設計し直しました。これまで無償で応じていた短納期や小ロットに、正式な価格を付ける。値段が上がるのではなく、何にいくらかかるのかを明示する形にしています。

STEP 04:実行計画の策定

お客様を、価格への敏感さと取引先としての重要度の2つで分類しました。そのうえで、対象の商品、改定の率、いつ伝えるか、代わりに示せる選択肢、営業がどう説明するかを設計しています。取引量の多いお客様には、価格だけを切り出さず、契約の条件と合わせて話し合う形にしました。

STEP 05:実行方法・振り返り方法

見るのは、粗利率、失注の割合、値上げを受け入れていただけた割合、お客様ごとの利益、特注が占める割合です。**売上が減ったことだけを失敗と見ません。**利益の薄い取引が減り、全体の利益と取引先の構成が良くなっていれば、狙いどおりです。逆に、守ると決めたお客様が離れていれば、そこは見直します。

価格戦略は「高くする方法」ではない

値上げの相談では、何%上げるかに話が集まります。けれども率だけを決めても、どのお客様が受け入れ、どのお客様が離れるかは分かりません。一律にすると、離れてほしくない相手ほど強く反応することもあります。

決めるべきなのは、お客様が感じている価値と、自社がかけているコスト。この2つに合わせて、価格とサービスの組み合わせを作り直すことです。値段だけを動かすのではなく、何を含めて何を含めないのかを決め直します。

出発点は「とりあえず10%上げたい」でした。5つのプロセスを通ると、上げ幅より先に決めることがあると分かります。どこで価値を分けるのか。それが決まれば、率は結果として出てきます。

実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。

対話を重ねるうちに、値上げの前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

戦略コンサルの思考プロセスを、365日24時間、AIで。経営から、営業・DX・人事・組織まで。現状分析・戦略方針・KPI・実行計画・振り返りまで、ひと続きで。