戦略ファシリテーター
事例で整理約3分

採用人数を増やす前に。人事・人材戦略を5ステップで整理してみた

従業員200名のIT企業から「採用はできるのに、若手が3年以内に辞めてしまう」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は採用人数から、入社後に活躍できる状態をどう作るかへ移っていきます。

「採用はできているんです。でも、若手が3年以内に辞めてしまって」

IT企業の人事責任者の方から、こんな相談をいただきました。従業員は200名。募集をかければ人は集まり、採用そのものは順調です。それでも若手の離職が増え、経営は採用予算をさらに増やそうとしていました。

採用計画は年間100人。従業員200名の会社ですから、毎年その半分にあたる人数を採り続けている計算になります。辞める人が多いぶん、採る人数も増えていました。

人数を増やせば、頭数はそろいます。けれども辞める理由が変わらなければ、翌年も同じだけ採ることになります。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、考えるべき対象そのものが変わっていきます。

STEP 01:ビジョン・目的・目標

目標を「年間100人採用」から、「事業に必要な人材を確保し、3年定着率を80%以上にする」へ置き直しました。採用と定着を、別々の取り組みではなくひとつの戦略として扱います。何人採るかではなく、事業がこれから何をしようとしていて、そのために誰が必要なのか。そこを先に決めました。

STEP 02:現状分析

辞めた人を、職種、上司、配属先、入社の経路、在籍年数に分けて見ました。給与も理由には挙がります。ただ、主な原因は別のところにありました。入社前に聞いていた仕事と、配属後の実際の仕事が違うこと。そして、この先どう成長していくのかが見えないこと。この2つです。

STEP 03:戦略の方針策定・確定

採用のメッセージ、配属、入社後の受け入れ、上司の育成、キャリア面談。これらを別々の施策ではなく、ひとつながりの設計として組み直しました。人材戦略の中心を「採る」から「活躍できる状態まで作る」へ移しています。現状分析で見えた2つの原因に、それぞれ手を当てる形です。

STEP 04:実行計画の策定

求人票を書き直し、選考の場で仕事の中身を具体的に説明します。入社後は30日・60日・90日で受け入れの節目を置き、上司との1対1の面談を定例にして、6か月でキャリア面談を行います。職種ごとに、必要な能力と成長の道筋を明文化しました。期待していた仕事とのずれは選考の段階で、成長の見えなさは入社後の面談で、それぞれ潰していきます。

STEP 05:実行方法・振り返り方法

見るのは、採用の充足率、入社3か月・6か月・12か月の離職率、戦力になるまでの期間、上司との1対1面談の実施率、そして働く人の意欲を測る調査の結果です。目標は3年の定着率ですが、3年待ってから手を打つことはできません。3か月・6か月・12か月の離職率を、3年後を先に知らせる数字として見ています。

採用計画は、人事戦略の一部でしかない

人が足りない会社では、原因を採用活動に求めがちです。けれども「採れているのに辞める」場合、問題は採ったあとにあります。人数を増やしても、辞める理由がそのままなら、翌年も同じ人数を採ることになります。

決めるべきなのは、何人採るかではありません。事業がこれから何をしようとしていて、どんな人が、どんな環境でなら力を出せて、残るのか。この3つがつながって、はじめて人事戦略になります。つながらないまま人数だけを追うと、採用と現場が別々に動きます。

出発点は「採用しても若手が辞めてしまう」でした。5つのプロセスを通ると、手を打つ場所が採用の外側にあると分かります。入社前に何を伝えるか、最初の3か月をどう設計するか、上司が何をするか。採用計画は、そのうちのひとつです。

実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。

対話を重ねるうちに、採用の前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

戦略コンサルの思考プロセスを、365日24時間、AIで。経営から、営業・DX・人事・組織まで。現状分析・戦略方針・KPI・実行計画・振り返りまで、ひと続きで。