戦略ファシリテーター

離職率・定着率 用語

りしょくりつ・ていちゃくりつ

一定期間に会社を辞めた人の割合が離職率、辞めずに残った人の割合が定着率で、人材の維持力と組織の健全性を測る指標。

一定期間に辞めた人の割合が離職率、残った人の割合が定着率。母数と期間の定義を先に固定する。

離職率と定着率の式。離職者数を期首の在籍者数で割る。定着率は100から離職率を引く離職率%期間の離職者数÷期首の在籍者数×100定着率%100離職率期中採用者を分母に含めるか、新卒3年以内などの区切りで値が変わる。算定ルールを先に固定離職率は遅行指標。母数が小さいと1〜2名で跳ねるので、複数年の推移や実人数で見る

説明

離職率と定着率は、組織が人材をどれだけ維持できているかを測る表裏一体の指標です。 離職率(%)=一定期間の離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100 で計算し、分子は「その期間に辞めた人数(人)」、分母は「期首時点の在籍者数(人)」、単位は%です。 定着率(%)は同じ集団を追う場合 100 −(離職率)、または 期末まで在籍した人数 ÷ 期首の在籍者数 × 100 で求めます。 期中に採用した人を分母に含めるか、新卒3年以内など対象期間・対象者をどう区切るかで数値が変わるため、算定ルール(分母の定義・期間・母集団)を先に固定することが正確な比較の前提です。

適用例

従業員40名・年商4億円のB2B向けSaaS「A社」で、直近1年間に6名が退職したとする。 離職率=6名 ÷ 期首在籍40名 × 100 = 15%。 同じ40名の集団を追うと、期末まで残ったのは34名なので定着率=34 ÷ 40 × 100 = 85%(=100 − 15)。 1名採用・育成のやり直しコストを100万円(採用広告・面接工数・立ち上がり3か月の低生産性)と置くと、年間の離職コストは6名 × 100万円 = 600万円。 施策で離職率を15%→8%に下げられれば離職は40名 × 8% = 3.2名、約3名に減り、6名 − 3名 = 3名分、年300万円のコスト削減になる。 粗利率60%のSaaSなら、この300万円は年間追加売上500万円(300万円 ÷ 0.6)に匹敵する。 定着率は「解約率(顧客の離脱)」と混同せず、あくまで従業員の維持を測る指標として扱う。

よくある誤解・つまずき

  • 離職率が低いほど良い、と単純に喜ぶ誤解。 ローパフォーマーが辞めずに滞留していても離職率は下がるため、低すぎる離職率は『組織が硬直し新陳代謝が止まっている』サインのこともある。 全体の離職率だけでなく、辞めてほしくない中核人材(ハイパフォーマー)の離職率と、意図しない自己都合退職に絞って見ないと実態を見誤る。
  • 分母の定義を決めずに他社・前年と比較する落とし穴。 『離職者数 ÷ 期首在籍』か『÷(期首+期末)÷2の平均在籍』か、期中入社者を含めるか、対象を正社員のみとするかで数値は大きくぶれる。 算定式をそろえずに『業界平均より低い』と結論づけると比較が成立しない。 まず自社の算定ルールを固定し、毎回同じ式で追う。
  • 定着率を顧客の継続率(リテンション率・解約率の裏返し)と取り違える誤解。 どちらも『残った割合』だが、離職率・定着率は従業員、リテンション率・解約率は顧客が対象で、指標の管掌部門も打ち手もまったく異なる。 数値を並べる際は対象(人材か顧客か)を必ず明示する。

使うタイミング

主に②現状分析で自社の内部環境(経営資源・組織の健全性)を把握する場面と、⑤実行・振り返りで施策の効果をモニタリングする場面で使います。 SWOTの強み・弱みを事実で裏づけるとき、『採用は追いつくが定着が弱い』といった内部の弱みを数字で示す根拠になります。 使いどころを誤る失敗=母数が10名前後と小さい中小企業では、1〜2名の退職で離職率が大きく跳ねるため、単年の%だけで一喜一憂せず複数年の推移や実人数で見る必要があります。 また、離職率は『辞めた事実』を示す遅行指標なので、これ単体を目標にすると手遅れになりがちで、従業員満足度・面談での兆候といった先行指標と組み合わせて早期に手を打つのが実務の要点です。 改善施策の前後で算定ルールを変えないことも比較の前提になります。

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