戦略ファシリテーター
事例で整理約3分

良い商品なのに売れない。GTM戦略を5ステップで整理してみた

法人向けSaaSの会社から「商品はいいのに、なぜか売れない」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は機能をどう説明するかから、誰に何を価値として届けるかへ移っていきます。

「商品はいいんです。でも、なぜか売れないんですよ」

法人向けのSaaSを提供する会社から、こんな相談をいただきました。機能の数では競合を上回っています。それでも、問い合わせが商談に進む割合が低い。営業の現場では「もっと機能を説明すれば売れる」と考えられていました。

売るための設計は、GTM戦略と呼ばれます。「Go To Market」の略で、誰に、何を価値として届け、どの道筋で購入まで進んでもらうかを決めることです。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、直すべき場所が説明の外側にあると見えてきます。

STEP 01:ビジョン・目的・目標

目的を「機能を理解してもらう」から、「月に20社の有料契約を獲得する」へ置き直しました。あわせて、誰に売るのか、社内で誰が導入を決めるのかも決めています。理解してもらうことは手段であって、そこを目的にすると説明が長くなるばかりで、契約には近づきません。

STEP 02:現状分析

受注できなかった商談を、理由ごとに分けて見ました。多かったのは競合に負けた案件ではありません。「自社に必要かどうか分からない」という理由です。紹介ページも営業資料も、機能の説明から始まっていました。読む側の困りごとから始まっていないため、自分に関係があるかどうかを判断できない状態でした。

STEP 03:戦略の方針策定・確定

対象を「従業員100〜500名で、月次の業務に手作業が残っている企業」に絞りました。前に出す価値は機能の数ではなく、「作業時間を月30時間減らせること」です。機能の豊富さは、必要だと分かった人にだけ意味を持ちます。まず自分ごとになってもらう。順番をそう決めました。

STEP 04:実行計画の策定

紹介ページ、広告、説明会、内勤の営業、実演。この5つで伝える価値を同じ言葉にそろえました。そのうえで、無料診断から実演、試験導入、契約へと進む道筋を作り、各段階で次に進む割合の目標を置いています。同じ人が複数の接点を通るので、言っていることがずれると、そのたびに判断がやり直しになります。

STEP 05:実行方法・振り返り方法

見るのは問い合わせの数だけではありません。問い合わせのうち対象に合っている割合、商談に進む割合、試験導入に進む割合、契約に至る割合、1件の契約を得るためにかかった費用、そしてその費用を何か月で回収できるか。あわせて、実演の場に導入を決める人が出てきているかも確認します。STEP 01 で「社内で誰が導入を決めるのか」を決めているので、その人に届いているかをここで確かめるためです。どの段階が弱いのかを特定して、そこだけを直します。

「どう売るか」の前に、「誰に何を」がある

売れないとき、多くの場合は売り方から見直します。資料を作り直し、話し方を変え、広告を増やす。けれども対象と価値が決まっていないと、どの手を打っても効きません。誰に向けた資料なのかが決まっていないからです。

決めるべきなのは3つです。誰に売るのか。その人にとって何が価値なのか。どの道筋で購入まで進んでもらうのか。この3つがそろって、はじめて売り方の話ができます。

出発点は「商品はいいのに売れない」でした。5つのプロセスを通ると、直すべきなのは説明の巧さではないと分かります。機能の説明を足すほど、必要かどうかの判断は遠のいていました。

実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。

対話を重ねるうちに、売り方の前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

戦略コンサルの思考プロセスを、365日24時間、AIで。経営から、営業・DX・人事・組織まで。現状分析・戦略方針・KPI・実行計画・振り返りまで、ひと続きで。