戦略ファシリテーター
事例で整理約3分

海外進出で最初に決めるのは「国」ではない。5ステップで整理してみた

食品メーカーから「海外に出るなら、まずアメリカですよね」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は市場の大きさから、自社が勝てる場所で勝ち筋を確かめられるかへ移っていきます。

「海外に出るなら、まずアメリカですよね?」

食品メーカーの経営企画の方から、こんな相談をいただきました。国内では評価の高い商品を持っています。候補に挙がっていたのは米国、台湾、シンガポールの3つ。経営会議では「市場がいちばん大きい」という理由で米国が有力でした。

市場が大きいことは事実です。けれども、大きい市場はそれだけ相手も多く、入るための費用も高くつきます。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、最初に決めるべきなのは国ではないと見えてきます。

STEP 01:ビジョン・目的・目標

目的を「海外売上を作る」から、「5年で海外売上の比率を15%にする。ただし国内で築いたブランドの価値を損なわない」へ置き直しました。**2つ目の条件が重要です。**安売りで数を伸ばせば比率は上がりますが、国内で積み上げた評価は下がります。片方だけを追わないよう、最初に併記しました。

STEP 02:現状分析

比べたのは市場の規模だけではありません。買う力、競合、日本の食品がどう受け止められているか、規制、物流、現地での価格、売り場をどう確保するか、そして自社がどれだけ供給できるか。並べてみると、米国は市場こそ大きいものの、最初にかかる費用と競争の激しさが際立っていました。

STEP 03:戦略の方針策定・確定

まず台湾とシンガポールで、価格の高い商品が受け入れられるかを確かめることにしました。現地の取引先と組み、売れる商品、価格、伝え方を固めてから、大きな市場へ進みます。順番を変えただけで、失敗したときに失う金額が変わります。小さく確かめてから広げる形にしました。

STEP 04:実行計画の策定

国ごとに仮説を立て、取引先を選び、試験的に販売し、結果を見て、扱う商品を絞り、価格を見直し、本格的に展開する。この順序を決めました。あわせて、国ごとに撤退の基準も先に置いています。始めるときに引き際を決めておかないと、続けるかどうかの判断が感情に寄ります。

STEP 05:実行方法・振り返り方法

見るのは売上だけではありません。買い直してもらえた割合、粗利、物流にかかる費用、1店舗あたりの販売数、お客様1人を獲得するのにかかった費用。これらを国ごとに確認し、投資を続けるのか、縮めるのかを判断します。あわせて、国内で値引きに巻き込まれていないか、国内向けの価格が崩れていないかも見ます。STEP 01 で置いた2つ目の条件を、ここで確かめるためです。

大きな市場に行くことと、勝てることは違う

海外展開の相談では、どの国に出るかから議論が始まります。市場の規模が並べられ、いちばん大きいところが選ばれる。判断としては自然ですが、市場が大きいことは、自社が勝てる理由にはなりません。

先に決めるべきなのは、どんな条件がそろえば自社の商品が売れるのか、という勝ち筋です。それが分かってから、条件を満たす国を選びます。順番を逆にすると、大きな市場で勝ち筋を探すことになり、探している間に費用だけが出ていきます。

出発点は「まずアメリカですよね」でした。5つのプロセスを通ると、最初に決めるのは国ではなく、何をもって「いける」と判断するかだと分かります。

実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。

対話を重ねるうちに、国を選ぶ前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

戦略コンサルの思考プロセスを、365日24時間、AIで。経営から、営業・DX・人事・組織まで。現状分析・戦略方針・KPI・実行計画・振り返りまで、ひと続きで。