紙をなくすだけではDXにならない。DX戦略を5ステップで整理してみた
従業員120名の卸売会社から「紙とExcelをなくしてDXしたい」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は何を導入するかから、仕事そのものをどう作り変えるかへ移っていきます。
「紙とExcelをなくして、DXしたいんです」
卸売会社の役員の方から、こんな相談をいただきました。従業員は120名。受発注の業務を紙からクラウドへ移すプロジェクトが、すでに動き始めていました。
ところが進めるほど、現場からの不満が増えていました。**紙は減ったのに、入力する作業がかえって増えている。**このままでは使われなくなる、というところで相談をいただきました。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、手を入れる順番が逆だったと見えてきます。
STEP 01:ビジョン・目的・目標
目的を「紙をなくす」から、「受注から出荷までにかかる日数を30%短縮し、入力の間違いを半分にする」へ置き直しました。紙が減ったかどうかは、やったことの記録でしかありません。仕事が速くなったか、間違いが減ったか。そこを目的に置くと、何を作るべきかも変わります。
STEP 02:現状分析
いまの業務を一つずつ書き出しました。見えてきたのは、問題は紙そのものではないということです。**営業、事務、倉庫が、同じ情報を何度も入力していました。**紙をクラウドに置き換えても、入力する場所が紙から画面に変わるだけで、回数は減りません。現場の不満は、ここから来ていました。
STEP 03:戦略の方針策定・確定
進めていたプロジェクトを、いったん止めました。紙を電子に置き換えることより、情報を一か所にまとめ、仕事の流れを設計し直すことを先に置きます。**すでにシステムを入れ始めていたので、機能を足す前に、不要な承認と二重入力を削る作業に戻りました。**順番を入れ替えたことで、作る機能そのものが減っています。
STEP 04:実行計画の策定
対象の業務を選び、いまの流れを書き出し、不要な工程を消し、そのうえで必要な機能を決め、小さく入れて、現場で直し、全社に広げる。この順序で進めます。成果の指標には、実際に使われている割合を入れました。入れて終わりにせず、使われて初めて完了とするためです。
STEP 05:実行方法・振り返り方法
測るのは、処理にかかる時間、入力の回数、間違いの発生率、使われている割合、そして現場の満足度です。**機能がいくつ増えたかでは判断しません。**投資を続けるかどうかは、仕事の成果が変わったかどうかで決めます。入力の回数が減っていなければ、機能が増えていても止めます。
デジタルを入れることと、仕事を変えることは違う
DXの相談は、多くの場合「何を入れるか」から始まります。製品を比べ、費用を見積もり、導入の計画を立てる。手順としては自然ですが、この順番だと、いまの仕事のやり方がそのまま画面に移ります。
先に決めるべきなのは、どの仕事をやめるか、どの工程を消すかです。消してから作れば、作るものは小さくなります。現場の負担も減ります。逆に、消さないまま入れると、紙のときの手間に画面の手間が足されます。
出発点は「紙とExcelをなくしたい」でした。5つのプロセスを通ると、DXとはデジタルを入れることではなく、デジタルがある前提で仕事そのものを作り変えることだと分かります。
実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。
対話を重ねるうちに、システムを選ぶ前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。
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