戦略ファシリテーター
事例で整理3

なぜサイゼリヤは、あの価格で利益を出せるのか。

企業の成功事例は、施策そのものより「何を目指し、どんな現状を見て、なぜその方向を選び、どう実行し、何を見直したのか」の5つでつなげて見ると、戦略の教材になります。サイゼリヤを5つの視点で整理します。

成功している会社の話を聞くと、「あの施策がすごかった」「あの商品が当たった」という部分に目が行きがちです。けれども、学ぶべきは施策そのものではありません。

その会社は何を目指していたのか。どんな現状を見ていたのか。なぜその方向を選んだのか。どう実行したのか。実行したあと、何を見直したのか。この5つをつなげて読むと、企業の事例は戦略の教材に変わります。サイゼリヤを題材に、この5つの視点で読んでみます。

① ビジョン・目的・目標

「おいしいものを、日常的に選べる価格で提供する」。サイゼリヤが実現しようとしているのはこの価値であり、それを一時的な値下げではなく、事業の構造そのもので実現しようとしています。

目に見える施策の手前に、「何を実現したいのか」がある。ここを見落として低価格という結果だけを眺めると、ただのコスト削減に見えてしまいます。

② 現状分析

原料の調達、加工、物流、店舗での調理。外食の工程には、外部に分散させるとコストも品質管理の難しさも増すものが多くあります。

戦略は理想だけでは組み立てられません。いまどこに立っているかが分からなければ、どこへ進むべきかも、何を変えるべきかも決まりません。この事例で注目したいのは、強みを列挙するだけでなく、その強みがどの市場や顧客で活きるのか、どこに制約があるのかまで見ている点です。

③ 戦略の方針策定・確定

顧客価値に直結する工程を自社の中でつなぎ、販売数量を読みやすい商品に集中する。それによって、品質と価格を同時に最適化する。これが方針です。

戦略の中心はここにあります。「何をやるか」だけでは方針になりません。「何をやらないか」「資源をどこに集めるか」まで決めて、はじめて方針と呼べます。サイゼリヤの強さは施策の派手さではなく、選択と集中を貫いている一貫性にあります。

④ 実行計画

工場、物流、商品構成、店舗のオペレーションを分断せず、ひとつの流れとして設計する。そのうえで、計画生産と標準化を組み合わせる。

戦略は、実行に移された瞬間にはじめて価値を持ちます。誰が、何を、どの順番で、どの指標を見ながら進めるのか。ここがぼやけたままだと、どれほど筋のよい戦略でも現場は動きません。

⑤ 実行・振り返り

販売実績、原料、製造、物流、店舗提供。それぞれのデータを見ながら、ムダがどこにあるかを継続的に見直す。

意外と抜け落ちるのが、この工程です。戦略は決めて終わりではなく、実行し、結果を見て、仮説を直す。その循環を通じて、戦略は現実に合わせて形を変えていきます。

事例は真似るものではなく、考えるための材料

こうして見ると、低価格という結果の裏側で、品質と価格を同時にコントロールできる事業構造を先に設計していることが分かります。価格戦略というより、全社の仕組みとして低価格を成り立たせているのです。

だから、「サイゼリヤの施策を真似れば自社もうまくいく」と考えるのは危険です。学ぶべきは施策の裏にある考え方のほうです。自社は何を目指すのか。現在地はどこか。どの選択肢に集中するのか。どう実行するのか。何を見ながら直すのか。この順番で考えれば、他社の事例は自社の戦略を組み立てるための材料になります。

戦略ファシリテーターも、この5つのプロセスを軸にしています。AIとの対話で考えを掘り下げ、戦略として整理していく。事例を眺めて終わりにせず、自社に置き換えて考える。それが、ケーススタディを経営に活かすいちばんの近道だと思います。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

パートナー型の戦略コンサルとの対話を、いつでもAIで。問いかける・引き出す・提案もする。