戦略ファシリテーター
戦略の考え方4

カップラーメン理論

カップラーメンは、10人で囲んでも3分が30秒にはなりません。人を増やすことと成果を増やすことは同じではない。「人が足りない」の前に「何が成果を止めているのか」を考えるための、組織の見方です。

成果をつくる人より、成果を支える人のほうが多くなっていないか。組織を眺めるときの、ひとつの見方を書いてみます。勝手に名付けた理論です。

人を足しても、成果はそのぶん増えない

先に結論を書きます。組織は、人を増やしたぶんだけ成果が増えるようにはできていません。効いてくるのは、「成果をつくる人」と「成果を支える人」の釣り合いです。間接部門が何人いるかではなく、その人たちが直接部門の成果をどれだけ押し上げているか。見るべきはそこです。

10人で囲んでも、3分は3分

カップラーメンは、お湯を注いで3分待てばできあがります。早く食べたいからといって10人を集めたら、どうなるでしょうか。3分が30秒に縮むことはありません。

代わりに、お湯を注ぐ係、時間を計る係、温度を確かめる係、進み具合を管理する係、報告を受ける係と、役割ばかりが増えていきます。1個のカップラーメンに、必要以上の人が関わる状態です。人数を増やすことと、成果を増やすことは別物。これを「カップラーメン理論」と呼んでいます。

会社で起きていること

営業が5人いる会社を想像してください。営業は、商談し、提案し、契約を取ることで売上をつくります。ここに、管理する人、企画する人、数字をまとめる人、会議を回す人、承認する人を加えたとします。

どれも必要な仕事です。けれども、営業5人の商談数や受注数が変わらなければ、売上は増えません。それどころか、会議、報告、資料づくり、確認と承認が増えて、営業がお客様と向き合う時間が6時間から4時間に減ることさえあります。人を増やしたのに、成果を生む時間が減っている。これでは本末転倒です。

間接部門を減らせ、という話ではない

念のために書いておくと、「間接部門をなくせ」と言いたいわけではありません。会社を支える大切な仕事が、間接部門にはあります。問題は、その仕事が直接部門の成果を増やしているかどうかです。

営業が毎日2時間費やしていた事務作業を間接部門が引き受け、営業が顧客と向き合う時間が6時間から8時間に増えた。これは、間接部門が営業の生産性を上げた状態です。逆に、間接部門が増えたことで会議や報告や承認が膨らみ、営業活動が6時間から4時間に減った。これは逆効果です。間接部門の役割は、直接部門を管理することではなく、直接部門が成果を出しやすい環境を整えることにあります。

「人が足りない」と言う前に

仕事が増えると、「人が足りないから増やそう」という発想になりがちです。その前に、いま何が成果を止めているのかを確かめる必要があります。営業であれば、商談の数が少ないのか、成約率が低いのか、事務作業に時間を奪われているのか、承認待ちが長いのか、顧客対応が遅れているのか。原因が違えば打ち手も違います。「人を増やす」は、数ある打ち手のひとつにすぎません。

人を増やす前に確かめたいのは、次の5点です。

  1. 本当に人が必要か:仕事の量が多いのか、それとも無駄な仕事が多いのか
  2. 仕事を減らせないか:いらない会議、報告、資料づくりはないか
  3. 自動化できないか:システムやAIに任せられる仕事はないか
  4. 役割を整理できないか:似た仕事を複数の部署で重ねていないか
  5. どこに置くべきか:成果を直接生む部門に人を置くほうがよくないか

判断の物差しはひとつ

人を増やすかどうかの判断は、ひとつの問いに集約できます。「この人が加わることで、会社の成果はどう増えるのか」。これに答えられるなら、増やす意味があります。

「営業事務を1人置けば営業の事務作業が減り、その時間を商談に回せる」なら、成果へのつながりが明確です。「忙しいから、とりあえず1人」では、つながりが見えません。

必要な場所に、必要な人数を

この理論は、人を減らそうという主張ではありません。必要な場所に、必要な人数を配置しようという主張です。成果をつくる人より支える人が多くなっていないか。間接部門を増やした結果、直接部門は本当に動きやすくなったか。その1人を増やすことで、会社全体の成果は本当に増えるのか。

組織を見るときに大事なのは、人が多いか少ないかではなく、その人が増えることで成果がどう増えるかです。だから、人を増やす前にボトルネックを探します。カップラーメンは、10人集まっても3分が30秒にはなりません。会社も同じです。「誰を増やすか」より先に、「何が成果を止めているのか」を考える。それがカップラーメン理論です。

書き手:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)会社概要
戦略ファシリテーター

パートナー型の戦略コンサルとの対話を、いつでもAIで。問いかける・引き出す・提案もする。