戦略は、作るだけでは意味がない。
31の研究をまとめたメタ分析(George, Walker & Monster, 2019)は、戦略計画と組織の成果にプラスの関係があることを示しました。ただし効くのは、戦略を「分析→目標→戦略→計画→実行」の流れにつなげた場合です。
「うちには戦略があります」と言える会社は多いと思います。けれども差がつくのは、戦略の有無ではなく、その戦略が計画に落ち、実行されているかどうかのほうかもしれません。戦略計画と組織の成果の関係を調べたメタ分析を手がかりに、考えてみます。
数字が示していること
George、Walker、Monster の3人は2019年、戦略計画と組織パフォーマンスの関係を扱った31の研究、87の相関関係をまとめて分析しました。結論は、両者のあいだに統計的に有意なプラスの関係がある、というものです。全体の効果量は0.229(p < .001)でした。
平たく言えば、「戦略計画にきちんと取り組んでいる組織ほど、成果も高い傾向がある」ということです。ただし、「戦略があれば売上が何%上がる」といった話ではありません。多くの研究を束ねて見たときに、プラスの関係が確認された、という意味です。
この研究が言う「戦略計画」とは
ここで注意したいのは、研究の中で「戦略計画」が何を指しているかです。「今年はこれを頑張ろう」と決めることではありません。組織の内外の環境を分析し、戦略的な課題を洗い出し、目標を置き、その目標に向かう戦略と計画をつくる。そこまでを含んだプロセスとして扱われています。
順に並べれば、分析 → 目標 → 戦略 → 計画 → 実行です。だから、戦略を「つくる」だけでは足りません。戦略を組織の正式なプロセスにして、行動につなげることに意味があります。
「戦略はあるのに動かない」が起きる理由
中期経営計画をつくった。経営戦略を決めた。年度方針を発表した。それなのに現場では、「結局、何を優先すればいいのか」「この目標は自分の仕事とどうつながるのか」という声が上がる。よくある光景です。
こうなると、戦略は「資料」で止まっています。戦略計画の要点は、戦略を掲げることではありません。分析の結果を目標に変換し、具体的な戦略と計画に落とし、それで組織を動かすところにあります。
何を「成果」と見るかで、効き方が変わる
この研究にはもうひとつ興味深い点があります。戦略計画の効果は、成果の測り方によって変わっていました。組織の「有効性」、つまり目指した成果をどれだけ実現できたかを指標にすると、プラスの関係はより強く出ます。一方で、「効率性」、どれだけ少ない資源で済んだかを指標にすると、関係は弱まりました。
戦略計画の価値は、コストをどれだけ削れたかより、「組織として狙った成果をどれだけ実現できたか」という物差しで見たときに、はっきり見えてきます。
つくるものから、動かすものへ
この研究から持ち帰りたいのは、戦略をつくることと実行することは、別の仕事だという点です。
立派な資料をつくり、経営会議で承認し、社員に共有する。それだけでは組織は変わりません。分析し、目標を決め、戦略を決め、具体的な計画にし、実行する。この流れが通ってはじめて、戦略は組織を同じ方向へ動かす仕組みになります。
「戦略があるのに、なぜ組織が動かないのか」。そう感じたら、戦略の中身を疑う前に、分析から実行までの流れがつながっているかを点検してみてください。成果へのヒントは、たいていそこにあります。
参考文献
George, B., Walker, R. M., & Monster, J. (2019). Does Strategic Planning Improve Organizational Performance? Public Administration Review.
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