MRR・ARR(月次・年次経常収益) 用語
毎月・毎年くり返し入る継続課金だけを積み上げた収益指標で、サブスク事業の実力と成長速度を測る土台となる数値。
毎月くり返し入る契約収益だけを積み上げる。一時収入は除く。年換算がARR。
説明
MRR(Monthly Recurring Revenue=月次経常収益)は、毎月くり返し発生する契約収益の合計。 計算式は MRR=各契約の月額料金の総和(単位:円/月)で、顧客あたりで見ると MRR=顧客あたり平均月額(ARPU)×課金顧客数。 年払い契約は月額に割り戻し(年額÷12)、初期費用・コンサル費・従量課金の一時収入は「くり返さない」ため除外する。 ARR(Annual Recurring Revenue=年次経常収益)は年単位の経常収益で、月額サブスクが中心なら ARR=MRR×12(単位:円/年)。 当月の増減は Net New MRR=新規MRR+拡張MRR(アップセル)−縮小MRR(ダウングレード)−解約MRR で表し、これが翌月MRRの伸びしろになる。
適用例
従業員10名・B2B向けクラウド在庫管理SaaS「A社」。 契約はライト¥5,000/月×40社=¥200,000、スタンダード¥15,000/月×24社=¥360,000、ビジネス¥40,000/月×6社=¥240,000。 加えて年払い契約が1社(¥1,200,000/年)あり、月額に割り戻すと¥1,200,000÷12=¥100,000/月。 MRR=200,000+360,000+240,000+100,000=¥900,000。 ARR=900,000×12=¥10,800,000。 ここで新規1社の初期設定費¥50,000は「くり返さない」ためMRRに入れない(入れると翌月MRRが実力より高く見え成長を見誤る)。 翌月の動きは、新規スタンダード3社=+45,000(3社×¥15,000)、既存のライト→スタンダード昇格2社=拡張+20,000(2社×差額¥10,000)、スタンダード→ライト降格1社=縮小−10,000(1社×差額¥10,000)、スタンダード1社解約=−15,000。 Net New MRR=45,000+20,000−10,000−15,000=+40,000。 翌月MRR=900,000+40,000=¥940,000、ARR換算=940,000×12=¥11,280,000となり、月次で回収する経常収益がどれだけ積み上がったかが一目で分かる。
よくある誤解・つまずき
- 一時収入をMRRに混ぜてしまう誤解。 初期設定費・導入コンサル費・スポット開発費・従量課金の超過分は「翌月も必ず入る」保証がない一時収入なので、MRRから外す。 例えば初期費用¥50,000を10社ぶん(¥500,000)その月のMRRに足すと、実力より高く見え、翌月に自動で¥500,000が消えて『MRRが急落した』と誤って騒ぐことになる。 MRRはあくまで“くり返す”収益だけで積む。
- 『ARR=今期の売上(実績)』という取り違え。 ARRは決算の売上高(PL)ではなく、ある時点のMRRを年換算した“ランレート(今のペースが1年続いた場合の額)”。 期の途中で新規契約や解約が動けば実際の年間売上とはズレる。 会計上の売上と経営管理のARRは目的が違う指標で、混同すると資金繰りや着地見込みを誤る。
- MRRの総額だけ見て中身の変化を見落とす落とし穴。 同じ『MRR横ばい』でも、解約が多いのを新規で埋めているだけの“穴の空いたバケツ”状態と、解約ゼロで純増している健全な状態はまったく別物。 New/Expansion/Contraction/Churn の4分解(Net New MRR)まで見ないと、成長エンジンが効いているのか漏れているのか判断できない。
使うタイミング
サブスク・継続課金モデルの事業で、月次・四半期の経営会議や事業計画づくりで使うのが基本。 特に③戦略方針・④アクションプランで「解約率を下げる/単価を上げる/新規を増やす」のどれに資源を割くかを決める土台になり、⑤振り返りでは目標MRRに対する着地とNet New MRRの内訳で打ち手の効果を検証する。 使いどころを誤る典型は、受託開発・単発物販・スポットコンサルなど“くり返さない”売上が主体の事業に無理やり当てはめること。 この場合はほぼ全額が一時収入でMRRが実態を表さないため、通常の売上高や粗利で見るべき。 また創業直後で契約数が数件しかない段階は、1社の増減でMRRが大きく振れるので単月の数字に一喜一憂せず、3〜6カ月のトレンドと解約率・拡張の内訳をセットで見る。
