戦略ファシリテーター

LTV(顧客生涯価値) 用語

エルティーブイ

顧客1人が取引期間を通じて自社にもたらす利益の総額を表す指標。 獲得コストと比べ事業の採算を測る物差しになる。

顧客1人が取引期間を通じてもたらす利益の累計。獲得コスト(CAC)と必ず対で見る。

LTVの式。サブスク型はARPU×粗利率÷月次解約率、単発購入型は平均購入単価×粗利率×平均購入回数LTVサブスク型・円ARPU月次売上/人×粗利率÷月次解約率LTV単発購入型・円平均購入単価×粗利率×平均購入回数1÷月次解約率=平均継続月数。売上でなく利益で測るため粗利率を掛ける獲得コスト(CAC)と対で見て、CACを十分に上回るかで投資判断する

説明

LTV(Life Time Value・顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引を始めてから離脱するまでに自社へもたらす利益の累計を表す指標です。 サブスク型では「LTV=ARPU(顧客1人あたりの月次売上・円)×粗利率(%)÷月次解約率(%)」で計算します。 粗利率をかけるのは売上ではなく利益で測るため、解約率で割るのは「1÷月次解約率=平均継続月数」を表すためです(単位はいずれも円)。 単発購入型なら「LTV=平均購入単価(円)×粗利率×平均購入回数」と置き換えます。 獲得コスト(CAC)と対で見て、CACをLTVが十分に上回るかで投資判断します。

適用例

従業員15名・年商1.6億円のB2B向けクラウド請求管理SaaS「A社」の例。 ARPU(顧客1社あたり月次売上)=8,000円、粗利率=80%、月次解約率=2%。 まず平均継続月数は 1÷0.02=50ヶ月。 LTV=ARPU8,000円×粗利率0.80×継続50ヶ月=320,000円。 別の代入でも一致を確認:月次の粗利貢献=8,000×0.80=6,400円、これに50ヶ月を掛けて6,400×50=320,000円(同値)。 ここで1社の獲得コスト(CAC)が広告費+営業人件費で50,000円だったとすると、LTV÷CAC=320,000÷50,000=6.4倍。 SaaSで健全とされる3倍を上回るため、獲得への投資を増やす余地があると判断できる。 仮に解約率が2%→4%へ悪化すると継続は50→25ヶ月、LTVは320,000→160,000円へ半減し、LTV÷CACは6.4→3.2倍まで落ちる。 売上を上げなくても「解約率を下げる」だけでLTVが伸びる構造が読み取れる。

よくある誤解・つまずき

  • 「LTV=顧客がこれまで払ってくれた累計売上」と過去実績で捉える誤解。 LTVは粗利ベースで、かつ将来にわたる見込みを含む指標。 売上のまま(粗利率をかけない)で計算すると採算を過大評価し、原価率の高い事業ほど誤差が大きくなる。 必ず粗利率をかけて利益で測る。
  • LTVだけを単独で追ってしまう落とし穴。 LTVが高くても、それを上回る獲得コスト(CAC)をかけていれば赤字。 LTVは必ずCACとセット(LTV÷CAC=3倍以上が目安、回収期間はCAC÷月次粗利で12ヶ月以内が目安)で評価する。 LTV単独の大小には意味がない。
  • 「解約率が読めない創業初期でもLTVを厳密に出せる」という誤解。 LTV=1÷解約率の式は解約率が安定して初めて信頼できる。 契約数が少なく解約率が月ごとに乱高下する初期は数字が跳ね、過大にも過小にもなる。 初期は幅を持たせ、母数が貯まってから精緻化する。

使うタイミング

主に②現状分析で自社の収益構造を把握する場面と、③戦略方針・④アクションプランで「獲得(広告・営業)にいくらまで投じてよいか」を決める場面で使う。 特にサブスク・継続課金・リピート購入型の事業で有効で、獲得コスト(CAC)と必ず対で見る。 使いどころを誤る典型は、契約データが少なく解約率が安定しない創業初期に厳密な単一値を出そうとするケース(数字が跳ねるため幅で扱う)と、単発・低頻度購入で継続の概念が薄い事業に月次解約率の式を無理に当てはめるケース。 後者は「平均単価×粗利率×平均購入回数」に置き換える。 また新規獲得だけでなく、既存顧客の解約率低下・単価向上(アップセル)でLTVを伸ばす打ち手の効果測定にも使う。

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