戦略ファシリテーター

貢献利益 用語

こうけんりえき

売上高から変動費とその事業・製品だけにかかる個別固定費を引いた利益。 共通固定費の回収余力と撤退可否を測る指標。

売上から変動費と、その事業だけの固定費を引いた利益。撤退するかどうかの中心的な物差し。

貢献利益の式。売上高から変動費と個別固定費を引く貢献利益売上高変動費個別固定費その事業だけの個別固定費=専任人員・専用サーバー・専用の広告枠など。本社管理部門のような共通固定費は引かない共通固定費の配賦後に赤字に見えても、貢献利益がプラスなら撤退で全社利益はむしろ減る

説明

貢献利益とは、ある事業・製品・顧客セグメントが、全社で共通してかかる固定費(共通固定費)の回収と全社利益にどれだけ貢献しているかを示す利益です。 計算式は「貢献利益(円)=売上高(円)−変動費(円)−個別固定費(円)」で、個別固定費とはその事業・製品にだけ直接ひもづく固定費(専任人員の人件費、専用サーバー、その製品専用の広告枠など)を指し、本社管理部門や全社オフィスのような共通固定費は差し引きません。 貢献利益率(%)=貢献利益 ÷ 売上高 × 100 も併用します。 「売上高−変動費」だけを引いた限界利益とは差し引く費用の範囲が異なり、貢献利益はそこからさらに個別固定費を控除した、一段深い採算指標です(なお貢献利益を限界利益と同義に使う流儀もあり、定義の前提を確認して使います)。

適用例

ある中小B2B向けSaaS企業が、複数プランのうち「Aプラン」1本の採算を測ります。 Aプランの月商が800万円、変動費(決済手数料・従量インフラ・個別サポート)が200万円なので、限界利益=800−200=600万円(限界利益率=600÷800×100=75%)。 ここからAプラン専任の開発・営業人件費や専用サーバーといった個別固定費350万円を引くと、貢献利益=600−350=250万円、貢献利益率=250÷800×100=31.25%です。 本社管理部門など全社共通固定費300万円をAプランに全額配賦すると、配賦後の営業利益は250−300=△50万円で、一見すると赤字プランに見えます。 しかし「Aプランをやめるべきか」を貢献利益で判定すると、撤退しても共通固定費300万円は残るため、失うのは貢献利益250万円分だけ。 つまり撤退すると全社利益はかえって250万円悪化します。 貢献利益がプラスである限り、そのプランは共通固定費の回収に貢献しており、撤退は不利だと数字で分かります。

よくある誤解・つまずき

  • 貢献利益=限界利益(売上−変動費)だと思い込む誤解。 教科書によっては両者を同義に扱う流儀もあるが、事業・製品別の採算判断では『売上−変動費−個別固定費』として個別固定費まで引くのが実務上有用。 どちらの定義で話しているかを先にそろえないと、撤退・継続の結論が変わる。
  • 共通固定費まで配賦した後の営業利益が赤字だと即撤退すべきだと考える誤解。 共通固定費は撤退しても残るため、判断基準は配賦後利益ではなく貢献利益。 貢献利益がプラスなら、その事業は共通固定費の回収に貢献しており、やめると全社利益はむしろ悪化する。
  • 個別固定費と共通固定費の線引きを曖昧にしたまま算出する落とし穴。 専任人員の人件費(個別)と兼任・本社管理費(共通)を取り違えると貢献利益がぶれ、どの製品を伸ばし・畳むかの判断を誤る。 撤退時に本当に消える費用かどうかで分類する。

使うタイミング

主に②現状分析で、事業・製品・顧客セグメントごとの採算を切り分けて把握する場面と、③戦略方針・④アクションプランで「どの製品に資源を寄せるか」「不採算に見える事業を撤退するか継続するか」を判断する場面で使います。 特に複数の製品・プランを持つ会社で、共通固定費の配賦後は赤字に見える事業の存続可否を決めるとき、貢献利益がプラスかどうかが撤退判断の中心的な物差しになります。 誤用条件は2つ。 第1に、個別固定費と共通固定費の分類(撤退で消えるか残るか)を曖昧にしたまま使うこと。 第2に、単一製品・単一事業しかなく共通固定費の切り分けが不要な場面で無理に持ち込むこと。 その場合は限界利益・損益分岐点で足ります。 あくまで「複数事業の資源配分と撤退判断」を助ける指標です。

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