黒字なのにお金が残らない。そんな会社の財務戦略を5ステップで整理してみた
年商6億円・営業利益4,000万円の設備工事会社から「利益は出ているのに、お金が残らない」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は利益の大きさから、その利益がいつ現金に変わるかへ移っていきます。
「利益は出てるんです。でも、なぜかお金が残らないんですよ」
設備工事会社を経営する方から、こんな相談をいただきました。売上は約6億円、営業利益は約4,000万円。決算は黒字です。それなのに、月末が近づくと資金繰りが苦しくなり、銀行からの借入が少しずつ増えていました。
数字の上では、うまくいっている会社に見えます。けれども、利益と手元の現金は、同じ動き方をしません。戦略づくりの5つのプロセスに沿って整理すると、そのずれがどこで生まれているのかが見えてきます。
STEP 01:ビジョン・目的・目標
目的を「利益を増やす」だけに置くのをやめました。代わりに、「成長のための投資を続けながら、最低3か月分の固定費を現預金で確保する」ことをゴールに据え直しています。利益の額と、手元に残る現金を、別々の目標として扱うようにしました。
STEP 02:現状分析
損益計算書だけでなく、売掛金の回収サイト、仕掛工事、買掛金、借入の返済、設備投資まで並べて見ました。浮かび上がったのは、入金より先に材料費と外注費が出ていく案件の構造です。利益が出ている案件ほど規模が大きく、そのぶん先に払う金額も大きい。黒字と資金繰りの苦しさは、ここで同時に起きていました。
STEP 03:戦略の方針策定・確定
利益率を上げることと、現金を早く手元に残すことを、分けて設計しました。大型案件は、着手金と中間金の条件を見直します。採算が低いうえに資金の負担が大きい案件は、受けるかどうかを選びます。そのうえで、手元に余った資金は設備の更新に優先して回すと決めました。
STEP 04:実行計画の策定
13週先までの資金繰り表を導入しました。案件ごとに売上、粗利、入金、支払を管理し、営業が見積もりを出す段階で資金の負担を確認します。回収の条件は営業の評価指標にも組み込み、受注してから資金を考える状態をなくしました。
STEP 05:実行方法・振り返り方法
毎月見るのは、営業利益率だけではありません。営業キャッシュフロー、DSO(売掛金が現金になるまでの日数)、案件別の資金収支、現預金の月数を合わせて確認します。利益と現金の開きが広がってきたら、案件の条件を組み直します。
相談は「いくら儲かるか」から「いつ現金になるか」へ
利益が出ているのに資金が苦しい会社では、損益計算書だけを見ても原因が分かりません。工事の先行支出と入金のタイミングを並べて、はじめて、資金がどこで詰まっているのかが見えてきます。
特に大事なのは、案件を受注する時点で資金の負担を確認することです。利益率が高くても、長い期間にわたって資金が寝る案件であれば、会社全体の現金には重い負担になります。13週資金繰り表があれば、数か月先の資金不足を前もって把握できます。足りなくなってから借入を検討するのではなく、受注の条件や投資の時期を先に判断できるようになります。
出発点は「利益は出ているのに、お金が残らない」でした。5つのプロセスを通ると、財務戦略で決めるべきなのは「いくら儲かるか」だけではないと分かります。その利益が、いつ現金に変わるのか。そこまで含めて事業を設計することです。
実際の戦略策定では、ここでご紹介した内容からさらに深く掘り下げ、具体的な論点や打ち手まで整理していきます。今回は、全体の流れが分かるところまでをご紹介しました。
対話を重ねるうちに、案件を受ける前に決めておくべきことが、はっきりしてきました。
同じ分類の記事
- 事例で整理約3分
なぜサイゼリヤは、あの価格で利益を出せるのか。
企業の成功事例は、施策そのものより「何を目指し、どんな現状を見て、なぜその方向を選び、どう実行し、何を見直したのか」の5つでつなげて見ると、戦略の教材になります。サイゼリヤを5つの視点で整理します。
読む → - 事例で整理約2分
商品を増やす前に考えたこと。老舗メーカーの事業戦略を5ステップで整理してみる
創業60年・売上12億円の菓子メーカーから「商品を増やせば売上も増えるはず」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、「もっと売る」より「何を伸ばし、何をやめるか」を決めることが先だと分かります。
読む → - 事例で整理約2分
「売上を10億円にしたい」と言われたので、5ステップで戦略を整理してみた
社員45名・売上8億円の印刷会社から「売上を10億円にしたい」と相談を受けました。5つのプロセスで整理すると、論点は「10億円」という数字から「どんな顧客と案件で10億円をつくるか」に変わっていきます。
読む →
