戦略ファシリテーター

価値の提供方法 フレームワーク

かちのていきょうほうほう

決めた提供価値を、ヒト・モノ・カネという経営資源をどう組み合わせて顧客へ届けるかを整理する現状分析の手法。

「誰に・どんな価値を」の後、それをヒト・モノ・カネのどの資源で、どう届けるかを棚卸しする。何を売るかではなく「どう届けるか」。

価値の提供方法の図。ヒト、モノ、カネの3つの資源ヒト人材・体制担当者・スキル・人数・体制モノ商品・設備・仕組み商品の形・設備・IT・提供チャネルカネ費用・投資提供にかかる原価・投資・単価それぞれ「理想(本来必要な状態)」と「現状」を並べ、ギャップを特定する

3資源それぞれで理想と現状を並べてギャップを出す。提供方法そのものを変えれば価値が上がる論点(対面→オンライン、手作業→自動化)が差別化とコスト改善の種。

用途

「誰に・どんな価値を」まで決まっても、それを実際に届ける段取り=提供の仕組みが曖昧なままだと、戦略は絵に描いた餅で終わります。 価値の提供方法は、届けるべき価値を「ヒト(人材・体制)」「モノ(商品・設備・仕組み・チャネル)」「カネ(費用・投資)」の3つの経営資源に分解し、いまその資源が足りているか・どう使えば価値が届くかを棚卸しする手法です。 狙いは3つあります。 第一に、価値と資源のギャップを見える化すること(届けたい価値に対して人も設備も足りない、という不整合を先に潰す)。 第二に、STEP4のアクションプランで実際に「誰が・何を・いくらで」動かすかを決める前段の土台を作ること。 第三に、同じ価値でも提供方法を変えれば競合と差がつく点(例:対面提供をオンライン化する)を発見することです。 何を売るかではなく「どうやって届けるか」に焦点を当てる点が、価値提案系の手法との決定的な違いです。

使い方

  1. 届けたい提供価値を1文で確定する。 事業ドメインやバリュープロポジションで整理した「誰に・どんな価値を」をそのまま持ち込み、この分析では『それをどう届けるか』だけに集中する(価値の中身をここで再検討しない)。
  2. その価値を届けるために必要な資源を3つに分解して書き出す。 ヒト=担当者・スキル・人数・体制、モノ=商品/サービスの形・設備・ITの仕組み・提供チャネル(店頭/訪問/オンライン等)、カネ=提供にかかる原価・投資・単価。
  3. 3資源それぞれで『理想(価値を届けるのに本来必要な状態)』と『現状(いま持っている状態)』を並べ、ギャップを特定する。 人が足りない/仕組みが手作業/投資が回収できていない、などを具体的に言語化する。
  4. ギャップの中で、提供方法そのものを変えれば価値が上がる・コストが下がる論点を洗い出す(例:対面→オンライン、手作業→自動化、都度対応→仕組み化)。 ここが差別化とコスト改善の種になる。
  5. 洗い出した資源ギャップと改善論点を、STEP4アクションプランの『ヒト・モノ・カネの配分』へ引き継ぐ。 誰が・いつまでに・いくら投じるかは次工程で確定させ、この段階では『何が足りず何を変えるか』の合意までに留める。

適用例

地方都市で従業員6名の税理士事務所(B2B・年商7,200万円)を例にします。 バリュープロポジションで固めた提供価値は「創業3年以内の小規模事業者に、月次で経営数値を可視化し次の一手を助言する」こと。 これを価値の提供方法で3資源に分解しました。 ヒト=顧問対応は所長1名に集中し、月次面談は1社あたり2時間×担当1名(有資格者2名で計40社が上限)。 モノ=月次資料は職員が手作業でExcel集計、面談は原則訪問(往復移動が平均1.5時間)。 カネ=月額顧問料は平均3.5万円/社、うち提供コスト(人件費按分+移動費)は約2.1万円/社で粗利率40%。 ギャップ分析で「訪問と手集計に時間を取られ、肝心の助言に使える時間が面談2時間中30分しかない」ことが判明。 提供方法を変える打ち手として、(1)月次集計をクラウド会計連携で自動化(職員の集計工数を1社あたり月3時間→1時間へ)、(2)面談の半分をオンライン化(移動1.5時間を削減)を設定。 試算では、担当1名あたりの対応可能数が20社→28社(+40%)、提供コストが2.1万円→1.6万円/社に下がり粗利率が40%→54%へ改善。 この資源ギャップと打ち手をSTEP4に渡し「クラウド会計導入(初期費用18万円・月額1.2万円)を第2四半期に実行」というアクションプランに落とし込みました。

よくある誤解・つまずき

  • 「価値の提供方法=マーケティングの4P(特にPlace=流通)と同じ」という誤解。 4Pは市場に対して何を・いくらで・どこで・どう告知するかの打ち手の組み合わせであり、価値の提供方法は自社が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ)の視点で『届ける仕組みが回るか』を見る。 売り方の設計(4P)の前提となる、届ける体力の点検が価値の提供方法です。
  • 「何を売るか(提供価値)をこの手法で考え直せる」という誤解。 価値の中身を決めるのはバリュープロポジションや本質的価値と表面的価値の役割で、価値の提供方法はその手前で決めた価値を所与とし『どう届けるか』だけを扱う。 ここで価値の再定義を始めると分析が発散し、資源の棚卸しが進まない。
  • 「ヒト・モノ・カネの具体的な配分(誰が・いくら)まで現状分析で決めるべき」という誤解。 実務ではこの段階は『何が足りず、どこを変えるか』の合意まで。 担当・期限・投資額の確定はSTEP4アクションプランの仕事で、前倒しすると根拠の薄い数字が独り歩きする。

使うタイミング

使うのはSTEP2現状分析の後半、事業ドメインやバリュープロポジションで「誰に・どんな価値を」が定まった直後が最適です。 早すぎる失敗=提供価値がまだ曖昧なうちに資源分解を始めると、届けるべき価値が動くたびに必要資源の見立てもやり直しになり、堂々巡りになります。 まず価値を1文で確定してから着手してください。 遅すぎる失敗=資源の棚卸しをせずにSTEP4アクションプランへ飛ぶと、「新サービスを始める」と決めた後で人も設備も足りないと発覚し、計画が絵に描いた餅になります。 特に、提供に人手や設備が重く関わる事業(士業・製造・対面サービス・現場作業を伴うB2B)では効果が大きく、逆にデジタル完結で追加提供コストがほぼゼロのSaaSでは、モノ(=システムの拡張性)とカネ(=開発投資)に論点が偏るため、ヒトの体制(サポート・オンボーディング)まで含めて見落とさないことが要点です。

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