戦略ファシリテーター

7S(マッキンゼーの7S) フレームワーク

ななエス

組織を戦略・構造・システム・価値観・人材・スキル・スタイルの7要素に分け、要素間のズレを見つけて整合させる現状分析の型。

組織を7つの要素に分け、要素間のズレを見つける。中心は共有価値観。変えやすいハードの3Sと、変えにくいソフトの4Sを切り分ける。

7Sの図。中央の共有価値観を、戦略、構造、システム、人材、スキル、スタイルの6要素が囲むShared Value共有価値観Strategy戦略ハードStructure構造ハードSystemシステムハードStaff人材ソフトSkillスキルソフトStyleスタイルソフトハードの3S 戦略・構造・システム。変えやすい(数か月)ソフトの4S 共有価値観・人材・スキル・スタイル。変えにくい(年単位)

「新戦略は高単価路線なのに、評価制度は売上件数で評価している」のような、2要素の組み合わせの矛盾を探す。ハードは数か月、ソフトは年単位で変わる。

用途

組織を7つの構成要素に分解し、それぞれの現状と要素間の整合性(かみ合い)を診断するためのフレームワークです。 優れた戦略を立てても実行されない企業の多くは、戦略(Strategy)と、それを支える組織の仕組み・人・文化がズレています。 7Sはそのズレを「見える化」し、どこを直せば戦略が回り出すかを特定します。 とくに変えやすいハードの3S(戦略・構造・システム)と、変えにくいソフトの4S(共有価値観・人材・スキル・スタイル)を切り分けることで、制度をいじっても現場が動かない真因がソフト側にあると気づけます。

使い方

  1. 7つのSを定義して現状を書き出す。 Strategy(戦略の方向性)/Structure(組織図・指揮系統)/System(業務プロセス・評価制度・ITツール)/Shared Value(社員が共有する価値観・存在意義)/Staff(人材の量と質・構成)/Skill(組織として持つ強み・ケイパビリティ)/Style(経営スタイル・組織風土)を、事実ベースで箇条書きにする。
  2. 7つの中心にShared Value(共有価値観)を置く。 他の6要素はすべてこの価値観と整合しているか、が診断の軸になる。 ここが曖昧だと他をいくら整えても組織はバラバラに動く。
  3. 要素どうしの矛盾を洗い出す。 「新戦略(Strategy)は高単価路線なのに、評価制度(System)は売上件数で評価している」のように、2要素の組み合わせで整合していないペアを探す。 ハードとソフトのまたがりを特に疑う。
  4. ズレの大きい要素と、変える難易度を整理する。 ハードのSは数か月で変えられるが、ソフトのS(風土・価値観)は年単位。 どこから手を付けるか優先順位をつける。
  5. 整合した状態(目指す7S)を描き、現状とのギャップを次の戦略方針・アクションプランに落とす。 7Sは診断で終えず、必ず打ち手に接続する。

適用例

従業員35名の業務システム受託開発会社(年商4.2億円)が、労働集約から脱却しようと自社SaaS「勤怠管理クラウド」を月額9,800円で立ち上げた。 ところが1年で契約はわずか18社(MRR約17.6万円)、目標100社に遠く及ばない。 7Sで現状分析すると、Strategy=「ストック型SaaSで粗利率を60%へ」と掲げる一方、Structure=全員が受託案件のプロジェクト単位で編成され、SaaS専任は0.5人(実質兼任)。 System=評価制度が「受託の請求額」でしか組まれておらず、SaaSの解約率やMRRは誰のKPIでもない。 Staff=営業経験者ゼロ(全員がエンジニア出身)、Skill=受託の開発力は高いがサブスク特有のカスタマーサクセスやオンボーディング設計の知見が皆無。 Style=「言われたものを作る」受託文化が染みつき、自ら仮説を出して売る発想が薄い。 中心のShared Value=「良いものを作れば売れる」という職人気質が、SaaSの「作った後に売り続ける」思想と真っ向から矛盾していた。 診断の結論は「ハードのS(戦略)だけ変えてソフトのS(価値観・スキル・スタイル)が受託のまま」=典型的な不整合。 打ち手として、SaaS専任チーム2名の切り出し(Structure)、MRR・解約率を評価に組み込む(System)、CS経験者1名の中途採用(Staff/Skill)を優先実行し、半年後にMRRは約58万円(59社)まで改善した。

よくある誤解・つまずき

  • 「7つの要素を埋めれば分析完了」という誤解。 7Sの本質は各要素の説明ではなく、要素間の“矛盾”を見つけることにある。 7つを綺麗に書き出しても、ペアで整合チェックをしなければ何も分かっていないのと同じ。
  • 「ハードのS(戦略・構造・システム)を変えれば組織は変わる」という誤解。 実際に組織の実行力を縛っているのは、変えにくいソフトのS(共有価値観・風土・スキル)であることが多い。 制度改定だけで現場が動かない典型がこれ。 中小企業ほど創業者の価値観=Shared Valueの影響が絶大で、ここを外すと打ち手が空回りする。
  • 「7Sは大企業の組織論だから中小企業には関係ない」という誤解。 むしろ人数が少ない中小企業のほうが、社長のStyleと社員のShared Valueが会社全体を直接支配するため、7要素のズレが業績に即・直結する。 組織図が小さいからこそ効く。

使うタイミング

現状分析(第2工程)で、とくに「戦略を変えたのに実行が伴わない」「制度は整えたのに現場が動かない」という組織側の実行課題を疑うときに使います。 逆に、市場・顧客・競合など“外部環境”のズレを調べたい段階で7Sを持ち出すのは早すぎ・お門違いで、3CやPESTなど外部フレームの出番です。 また、まだ戦略の方向性(Strategy)自体が固まっていない創業初期に7Sで組織の細部を診断しても、基準となる戦略がないため整合の判定ができず空回りします。 逆に遅すぎる失敗パターンは、アクションプランをすべて決め切った後に7Sを回すこと。 組織の実行制約は打ち手の前提条件なので、方針を固める前の現状分析で先に洗い出しておかないと、実行不能な計画を作り込んでしまいます。

出典

ピーターズ/ウォーターマンエクセレント・カンパニー(1982)

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