戦略ファシリテーター

シナジー分析 フレームワーク

シナジーぶんせき

M&Aや提携・多角化で、組み合わせによって増える粗利(売上シナジー)と減る費用(コストシナジー)から統合にかかる費用を引き、正味の効果を見積もる手法。

「一緒になれば強くなる」を、増える粗利・減る費用・かかる一時費用の3つに分けて金額で確かめる。正味の下限が、価格と条件の上限。

シナジー分析の式。売上シナジーとコストシナジーを足し、統合コストを引く正味の効果売上シナジー増える年間粗利コストシナジー減る年間費用統合コスト一時費用売上シナジー=追加で売れる数量×単価×粗利率(売上でなく粗利で数える)。統合コスト=システム統合・移転・配置転換など年間のフローと一時費用の時間軸をそろえる。初年度は50〜60%しか実現しない前提で保守的な下限を置く

用途

シナジー分析の目的は、「一緒になれば強くなる」という期待を、増える粗利・減る費用・かかる一時費用の3つに分けて金額で確かめることにある。 売上シナジーは相手の販路で自社商品が売れるといった追加の粗利、コストシナジーは物流や間接部門の統合で減る費用、統合コストはシステム統合や人員配置転換などの一時費用。 3つを同じ時間軸(年間のフローか、現在価値か)にそろえて足し引きしないと、一時費用を年間効果と混同して効果を過大に見積もる。 中小企業のM&Aや業務提携は、この分析を省いて「相乗効果」という言葉だけで決まりがちだが、正味の金額を保守的な下限で置くことで、買収価格や提携条件の上限が決まる。

使い方

  1. 共有できる資源を定性で挙げる:販路・顧客・設備・仕入・技術・人材のうち、組み合わせで使える資源を先に列挙する。 資源が無ければシナジーも無い。
  2. 売上シナジーを金額にする:追加で売れる数量×単価×粗利率=増分の年間粗利。 売上でなく粗利で数える。
  3. コストシナジーを金額にする:統合前後の費用の差額(年間)。 物流・仕入の共同化、間接部門の重複解消、獲得コストの低下などを費目ごとに置く。
  4. 統合コストを引く:システム統合・移転・人員の配置転換・ブランド変更などの一時費用。 年間のフローと一時費用の時間軸をそろえる(年換算するか、複数年を現在価値に直す)。
  5. 実現率と時期を反映する:初年度は50〜60%しか実現しない前提で段階的に置き、保守的な下限を『仮・要検証』と明記してSTEP3の方針と買収・提携条件に落とす。

適用例

【業務用洗剤の製造会社(従業員80名)が、同じ顧客層を持つ清掃用品の卸売会社を買収する例】 共有できる資源は、卸売会社の営業網(顧客1,200社)と自社の物流拠点だった。 ・売上シナジー:卸売会社の顧客に自社洗剤を年2,000ケース追加販売、単価5万円、粗利率40%=2,000×5万円×40%=年4,000万円の増分粗利 ・コストシナジー:物流拠点の統合で配送・倉庫費が年1,500万円減 ・統合コスト:基幹システムの統合と拠点移転で一時費用3,000万円 年間の正味シナジー=4,000万円+1,500万円=5,500万円。 初年度は実現率60%と置くと、5,500万円×60%−3,000万円=300万円で、初年度はほぼ効果が出ない。 2年目以降は年5,500万円が続く見込み。 買収側の社長は当初「年1億円の売上増」を根拠に買収価格を考えていたが、粗利で数えると年4,000万円、初年度は統合コストでほぼ相殺されることが分かった。 買収価格の上限を、2年目以降の正味5,500万円を基に見直し、初年度の資金繰りには統合コスト3,000万円を別枠で用意した。 実際の初年度の実現率は55%で、仮置きの60%より少し下回ったが、資金を別枠で持っていたため計画は崩れなかった。

よくある誤解・つまずき

  • 『売上シナジーを売上の額で数える』という誤解。 増えるのは売上でなく粗利。 売上1億円でも粗利率40%なら効果は4,000万円で、買収価格の根拠にできるのは粗利のほうである。
  • 『一時費用と年間効果を同じ表で足し引きする』という誤解。 統合コストは1回、シナジーは毎年。 時間軸をそろえず『年間5,500万円−一時3,000万円=2,500万円』を毎年の効果と読むと、2年目以降を過小に、初年度を過大に見積もる。
  • 『シナジーは計画どおり初年度から出る』という誤解。 営業網の共有も物流統合も現場の定着に時間がかかる。 初年度の実現率を50〜60%で置き、統合後の管理(PMI)で実現を追う。

使うタイミング

戦略づくりの5プロセスのうち②現状分析で、M&A・業務提携・多角化の効果を見積もる局面で使う。 経営戦略とM&A戦略で効く。 早すぎる失敗=共有できる資源を定性で特定する前に金額を置くと、根拠の無いシナジーを積み上げて買収価格を吊り上げる(資源の列挙が先)。 遅すぎる失敗=買収や提携の契約後に分析すると、価格や条件に反映できず、期待外れのシナジーを抱えたまま統合を進めることになる。 契約の前に保守的な下限で正味を出し、その額を価格と条件の上限にする。

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