戦略ファシリテーター

ERRC フレームワーク

イーアールアールシー

業界の常識的な競争要素を「取り除く・減らす・増やす・付け加える」の4アクションで組み替え、新しい価値を設計する手法。

業界の当たり前を、取り除く・減らす(コストを下げる)と、増やす・付け加える(価値を上げる)で組み替える。差別化と低コストの両立を狙う。

ERRCの図。取り除く、減らす、増やす、付け加えるの4つのアクションELIMINATE取り除く業界が競い合っているが顧客が求めていない要素REDUCE減らす過剰に作り込んでいる要素を業界標準以下にRAISE増やす業界標準では不足し顧客が困っている要素CREATE付け加える業界がまだ提供していない新しい価値取り除く・減らす → コストが下がる / 増やす・付け加える → 価値が上がる

まず業界で「これは当然」とされている競争要素を10前後書き出す。4象限を埋めたら、コストが下がり価値が上がっているかを検算する。ブルーオーシャンの価値曲線とセットで使う。

用途

「他社より少し良く・少し安く」の消耗戦から抜け出すための工程。 業界が当たり前に投資している競争要素を一度ゼロベースで疑い、コストを下げる要素(取り除く・減らす)と顧客価値を上げる要素(増やす・付け加える)を同時に設計することで、差別化と低コストの両立(バリューイノベーション)を狙う。 ②現状分析で自社と競合が「同じ土俵」で戦っていることが見えたとき、③戦略の方針策定へ橋渡しする発想ツールとして使う。

使い方

  1. 業界で「これは当然」とされている競争要素(価格・機能・サービス・品質など)を10前後書き出す
  2. 取り除く(Eliminate)=業界が競い合っているが、実は顧客が求めていない要素を消す
  3. 減らす(Reduce)=過剰に作り込んでいる要素を、思い切って業界標準以下に下げる
  4. 増やす(Raise)=業界標準では不足していて、顧客が本当は困っている要素を引き上げる
  5. 付け加える(Create)=業界がまだ提供していない、新しい価値要素を生み出す。 4象限を埋めたら『取り除く・減らす』でコスト、『増やす・付け加える』で価値が上がっているか検算する

適用例

従業員30名の中小向け勤怠管理SaaS(月額1IDあたり400円、既存顧客180社)が、大手との機能競争で解約率が月2.5%に悪化していた事例。 ERRCで整理すると――取り除く:ほぼ誰も使わない多言語対応・複雑なシフト自動最適化(開発工数を年480万円削減)/減らす:初期設定項目を42→12に削減/増やす:導入サポートを電話つき伴走型に引き上げ/付け加える:社労士監修の法改正アラート機能を新設。 結果、価格は月360円へ下げつつ「設定10分・法改正も自動で安心」を訴求し、6か月で解約率2.5%→1.1%、新規は月8社→14社に改善。 大手と同じ機能数では戦わず、別の価値曲線を描いた。

よくある誤解・つまずき

  • 「付け加える・増やす」だけに飛びつき、取り除く・減らすを疎かにする誤解。 それでは高機能・高コストになるだけで、値上げできなければ利益が出ない。 ERRCの肝はコストを下げる左側(取り除く・減らす)と価値を上げる右側(増やす・付け加える)を必ずセットで動かす点にある
  • 「取り除く=品質を落とす」という誤解。 取り除くべきは“業界が競っているが顧客は求めていない”要素であり、顧客が本当に価値を感じる部分まで削ると、ただの安売り・劣化版になる。 何を残すかの見極めが本質
  • 思いつきの4象限で終わらせてしまう落とし穴。 顧客の生の声(N1インタビュー等)や競合の実データで裏づけないと、『減らせると思ったら主力顧客の必須機能だった』という判断ミスが起きる

使うタイミング

②現状分析で、自社も競合も同じ競争要素(価格・機能・スペック)で消耗戦になっていると分かったときが最適なタイミング。 逆に、市場・顧客・競合の理解が浅いまま先に使うと、取り除く・減らすの判断根拠がなく空想に終わる(早すぎる失敗)。 また、既に明確な独自ポジションで利益が出ている事業に無理に適用すると、強みまで削って自滅しかねない。 まず3C・5Forces等で土俵を把握し、差別化の必要性が確認できてから使う。

出典

W・チャン・キムブルー・オーシャン戦略(ランダムハウス講談社, 2005)

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