戦略ファシリテーター

差別化マトリックス フレームワーク

さべつかマトリックス

自社と競合を顧客視点の2軸で座標化し、競合が手薄な「空いている位置」を差別化の狙い目として見つける現状分析の手法。

競合が固まる場所を避ける。顧客ニーズがあり、自社の強みで届く空白を1〜2点に絞る。

差別化マトリックスの図。価格と汎用・特化の2軸に、競合の密集地帯と空白地帯安い高い価格特定業種に特化汎用(広く浅く)提供の幅密集地帯(全員が同じ土俵)空白地帯(競合が弱い)競合A競合B競合C競合D差別化の候補

軸は営業現場の受注・失注理由から選ぶ。同じ意味の軸を2本選ぶと図が斜め一直線になり、意味を失う。図の軸は本文の例。

用途

「他社と比べて、うちは結局どこで選ばれているのか(選ばれていないのか)」を、頭の中の印象ではなく1枚の座標図で客観視するための道具です。 縦軸・横軸に顧客が購入を決める判断基準を置き、そこへ自社と主要競合をプロットすると、各社がどの領域に密集し、どこが手つかず(=競合が弱い空白地帯)かが一目で分かります。 全員が同じ土俵で殴り合っている「レッドオーシャンの真ん中」を避け、自社の強みが活き、かつ顧客ニーズがある位置取りを言語化することが目的です。 値下げ以外の勝ち筋を探す起点になります。

使い方

  1. 顧客が購入を決めるときに実際に比較している判断基準を、営業現場の失注・受注理由から10個ほど洗い出す(価格・納期・サポート・専門特化度・カスタマイズ性など)。
  2. その中から相関しない(別のことを測っている)2軸を選ぶ。 例:横軸『価格の安さ⇔高さ』、縦軸『汎用・広く浅く⇔特定業種に特化』。 同じ意味の軸を2本選ぶと図が斜め一直線になり無意味になるので注意。
  3. 2軸で作った座標に、自社と主要競合3〜5社を『印象』ではなく『顧客がどう評価しているか』でプロットする。 可能なら失注顧客への聞き取りや口コミで裏を取る。
  4. 競合が固まっている密集地帯と、誰もいない空白地帯を見つける。 空白のうち『顧客ニーズが存在し、かつ自社の強みで到達できる』位置を差別化候補として1〜2点に絞る。
  5. 絞った位置を『誰に・何が違うのか』の一文(バリュープロポジション)に落とし込み、STEP3の戦略方針・STEP4の施策へ引き継ぐ。

適用例

従業員25名・年商4億円の建設業向けクラウド工程管理SaaS「A社」の例。 国内競合は大手汎用SaaS(月2万円・全業種対応・機能豊富だが建設特有の職人手配や天候順延に非対応)と、無料〜月5,000円の格安ツール(機能は最小限)に二極化していた。 A社は当初、月6,000円の格安汎用ツールとして左下に位置し、有償契約48社・月間経常収益(MRR)約29万円(48社×6,000円)だったが、失注理由トップは「建設の現場に合わない」だった。 そこで横軸を『価格(安い⇔高い)』、縦軸を『対応業種(全業種汎用⇔建設特化)』としてプロットすると、右上(高価格×特化)と左上(低価格×特化)が空白だと判明。 A社は「左下の格安汎用ツール」から抜け出し、月1.2万円で天候順延の自動再スケジュールと職人手配機能を持つ『建設特化・中価格帯』へ位置取りを変更した。 結果、失注理由が解消し、導入後1年で有償契約社数が48社→112社、月次解約率が5.2%→2.1%、MRRが約29万円→約134万円(112社×1.2万円)へ拡大した。 値下げ競争に参加せず、単価を6,000円から1.2万円へ上げながら成約率を高められた点が要諦。

よくある誤解・つまずき

  • 『自社が良いと思う軸』で描いてしまう誤解。 軸は自社が誇りたい項目ではなく、顧客が実際に発注可否を決めている判断基準でなければ意味がない。 社内の思い込みで軸を選ぶと、都合よく自社が右上に来る自己満足の図になる。
  • 『空白=チャンス』と短絡する誤解。 誰もいない位置は、単に顧客ニーズが無い(=誰も欲しがらない)から空いているだけの場合が多い。 空白を見つけたら必ず『そこに需要とお金を払う顧客がいるか』『自社の強みで本当に到達できるか』を検証する。
  • 一度描いて満足し更新しない誤解。 競合が値下げや機能追加で位置を動かすと、せっかくの空白地帯はすぐ埋まる。 年1回・大型受注や失注が続いたタイミングで描き直し、位置取りが陳腐化していないか点検する必要がある。

使うタイミング

STEP2(現状分析)で、3Cや5Forcesで競合状況をつかんだ後、「価格以外の勝ち筋が見えない」「競合との違いを一言で言えない」ときに最も効きます。 早すぎる失敗は、顧客の判断基準や失注理由をまだ把握していない段階で描くと、軸が主観的な思い込みになり空白地帯も机上の空論になること。 遅すぎる失敗は、施策(STEP4)を打ち終え広告費まで投下してから位置取りの空白が実は無需要だったと気づくパターンで、投資が無駄になります。 競合が2社以上おり、顧客が複数の判断基準で比較検討している市場に向く一方、競合がほぼ存在しない独占市場や、判断基準が価格1点しかないコモディティ市場では効果が薄く、その場合はERRCやWTP(支払意思額)の検討へ切り替えます。

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