戦略ファシリテーター

デュポン分解 フレームワーク

デュポンぶんかい

ROE(自己資本利益率)を売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジの3要素に分解し、どこで稼ぎ、どこが弱いかを特定する手法。

ROEを、利益率・回転率・レバレッジの3つに分けて見る。同じROEでも、どれで稼いでいるかで打ち手は正反対になる。

デュポン分解の図。ROEを売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3要素に分け、それぞれの打ち手の領域××ROE(自己資本利益率)当期純利益÷自己資本売上高純利益率当期純利益÷売上高値付け・原価利益率が弱いなら総資産回転率売上高÷総資産在庫・売掛・遊休資産回転率が弱いなら財務レバレッジ総資産÷自己資本借入と自己資本レバレッジが弱いなら

ROE=当期純利益÷自己資本。3要素の掛け算がROEと一致するかを検算し、競合・業界平均・3期前の自社と並べて弱い要素を1つに絞る。

用途

デュポン分解の目的は、「ROEが高い・低い」という1つの結果を、「利益率で稼いでいるのか、資産の回転で稼いでいるのか、借入で増幅しているのか」という3つの原因に分けて見ることにある。 ROEは同じ12%でも、薄利多売で回転率が高い会社と、高利益率だが資産が重い会社では打ち手が正反対になる。 3要素に分ければ、自社が競合や過去の自分と比べてどの要素で劣っているかが1枚で分かり、値付け・原価・在庫・設備・借入のどこに手を入れるべきかが決まる。 中小企業では「利益率だけ」「売上だけ」を追いがちだが、回転率とレバレッジを同じ表に並べることで、資産の使い方と資本構成まで含めた経営の全体像が見える。

使い方

  1. 3つの数字を用意する:直近期の当期純利益・売上高・総資産・自己資本(総資産と自己資本は期首期末の平均が望ましい。 無ければ期末)。
  2. 3要素を計算する:売上高純利益率=当期純利益÷売上高、総資産回転率=売上高÷総資産、財務レバレッジ=総資産÷自己資本。 掛け算がROE(当期純利益÷自己資本)と一致するか検算する。
  3. 比べる相手を置く:競合・業界平均・自社の3期前の3要素を横に並べる。 ROEの差がどの要素の差から来ているかを見る。
  4. 弱い要素を1つに絞る:利益率なら値付けと原価、回転率なら在庫・売掛・遊休資産、レバレッジなら借入と自己資本の使い方、と打ち手の領域が決まる。
  5. STEP3の方針に落とす:特定した要素をどの水準まで持っていくかを目標にし、財務比率分析や運転資本CCCと接続して具体策へ進む。

適用例

【業務用食材の卸売会社(従業員40名・売上高12億円)の例】 当期純利益3,600万円・総資産8億円・自己資本3.2億円だった。 ・売上高純利益率=3,600万円÷12億円=3.0% ・総資産回転率=12億円÷8億円=1.5回 ・財務レバレッジ=8億円÷3.2億円=2.5倍 ・ROE=3.0%×1.5回×2.5倍=11.25%(検算:3,600万円÷3.2億円=11.25%) 同業の上位企業はROE 12%で、数字だけ見れば大差ない。 ところが3要素に分けると、上位企業は純利益率6.0%・回転率1.0回・レバレッジ2.0倍で、稼ぎ方が違っていた。 自社は回転率とレバレッジで数字を作り、利益率は半分しかなかった。 そこで方針を「回転率をこれ以上上げる(配送を増やす)」ではなく「利益率を上げる(不採算の小口配送の値上げと原価交渉)」に絞った。 1年後、純利益率が3.0%から4.0%へ改善し、回転率とレバレッジは据え置きのまま、ROEは4.0%×1.5×2.5=15.0%になった。 もし従来どおり配送件数を増やす投資を続けていれば、回転率は上がっても利益率がさらに薄まり、ROEはほとんど動かなかった。

よくある誤解・つまずき

  • 『ROEは高いほど良い』という誤解。 財務レバレッジを上げる(借入を増やす)だけでもROEは上がる。 3要素に分けて、レバレッジ由来の上昇は利益率や回転率の改善とは別物として扱う必要がある。
  • 『3要素は独立に動かせる』という誤解。 値上げで利益率を上げると数量が減って回転率が下がるなど、要素どうしは連動する。 1つを動かした結果を必ず3要素の掛け算で再検算する。
  • 『期末の数字だけで計算すればよい』という誤解。 総資産と自己資本は期中に変動するため、期末残高だけで計算した回転率とレバレッジは、期首期末平均で計算した競合の数字と比べられない。 同じ基準にそろえてから比べる。

使うタイミング

戦略づくりの5プロセスのうち②現状分析で使う。 とくに経営戦略・ファイナンス戦略・M&Aで「利益は出ているのに資本効率が上がらない」「競合と何が違うのか分からない」という局面で効く。 早すぎる失敗=当期純利益・売上高・総資産・自己資本の実データが無い段階で分解しようとすると、推測の数字を掛け合わせるだけで意味を持たない(実データが揃うまでは着眼点の整理にとどめる)。 遅すぎる失敗=設備投資や借入の方針を決めた後に分解すると、レバレッジが動いた理由を後付けで説明するだけになる。 投資や資本構成の判断の前に3要素を並べ、どの要素を動かす投資なのかを言えるようにしてから決める。

関連する用語・フレームワーク

フレームワークを知らなくても、戦略は立てられます

AI戦略ファシリテーターが対話しながら、あなたの戦略づくりを最後まで伴走します。

7日間無料で試す
監修・運営:株式会社イボルバパートナーズ(戦略コンサルティング)運営者・専門性について