運転資本CCC フレームワーク
仕入から現金回収までに資金が拘束される日数(CCC)を、在庫日数+売掛日数−買掛日数で測り、資金繰りの詰まりを日数で特定する手法。
仕入から入金までに資金が寝る日数。在庫日数+売掛日数−買掛日数。長いほど、売上が伸びるたびに運転資金が増える。
在庫日数DIO=棚卸資産÷売上原価×365、売掛日数DSO=売上債権÷売上高×365、買掛日数DPO=仕入債務÷売上原価×365。1日分の資金=売上原価÷365。図は概念図。
用途
運転資本CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の目的は、「黒字なのに現金が足りない」の正体を、日数という1つの物差しで見えるようにすることにある。 商品を仕入れてから売れるまで(在庫日数)、売ってから入金されるまで(売掛日数)は資金が寝ており、仕入代金を払うまで(買掛日数)は資金を借りているのと同じ。 3つを足し引きしたCCCが長いほど、売上が伸びるたびに運転資金が増えて資金繰りが苦しくなる。 日数で測ると、在庫を減らすのか、回収を早めるのか、支払条件を延ばすのか、どこを何日動かせばいくらの現金が浮くかが計算できる。 中小企業の成長期に起きる「勘定合って銭足らず」を、感覚でなく数字で防ぐための道具である。
使い方
- 5つの数字を用意する:棚卸資産・売上債権・仕入債務(それぞれ期末残高、できれば期首期末平均)と、売上高・売上原価(年間)。
- 3つの日数を計算する:在庫日数DIO=棚卸資産÷売上原価×365、売掛日数DSO=売上債権÷売上高×365、買掛日数DPO=仕入債務÷売上原価×365。 在庫と買掛の分母は売上原価、売掛の分母は売上高と決めて動かさない。
- CCCを出す:CCC=DIO+DSO−DPO(日)。 3期並べて、伸びているか縮んでいるかを見る。
- 1日の重さを金額にする:売上原価÷365が『1日分の資金』。 CCCを何日縮めれば運転資金がいくら浮くかを、日数×1日分で見積もる。
- 動かせる日数から方針へ:在庫(発注ロット・滞留品)、回収(請求のタイミング・回収条件)、支払(支払条件の交渉)のどれが現実的かを選び、STEP3の方針とSTEP4の施策に落とす。
適用例
【業務用機器の販売・保守会社(従業員25名・売上高3億円・売上原価1.8億円)の例】 期末の棚卸資産4,500万円・売上債権5,000万円・仕入債務1,500万円だった。 ・在庫日数DIO=4,500万円÷1.8億円×365=約91日 ・売掛日数DSO=5,000万円÷3億円×365=約61日 ・買掛日数DPO=1,500万円÷1.8億円×365=約30日 ・CCC=91+61−30=122日 仕入から現金化まで4か月かかっていた。 売上が前年比20%伸びたのに預金残高が減り続けた理由がここにあった。 1日分の資金は1.8億円÷365=約49万円なので、CCCを60日縮めれば約3,000万円の運転資金が浮く計算になる。 打ち手を3つに分けた。 滞留在庫の処分と発注ロットの半減で在庫を3,000万円へ(DIO 約61日)、検収後即日請求と回収条件45日への統一で売掛を約3,800万円へ(DSO 約46日)、主要仕入先2社と支払条件を45日へ交渉(DPO 約45日)。 1年後のCCCは61+46−45=62日となり、約60日の短縮で運転資金が約3,000万円減った。 売上の伸びはそのままに、短期借入に頼らず成長できる体質に変わった。
よくある誤解・つまずき
- 『在庫日数と買掛日数の分母を売上高で計算する』という誤解。 在庫と仕入債務は原価ベースの金額なので、分母は売上原価にする。 売上高で割ると日数が実態より短く出て、資金繰りの厳しさを見誤る。
- 『CCCは短いほど無条件に良い』という誤解。 支払を極端に延ばせば仕入先との関係が悪化し、在庫を削りすぎれば欠品で売上を失う。 取引条件と機会損失を含めて、どの日数まで縮めるかを決める。
- 『黒字なら資金繰りは問題ない』という誤解。 利益は発生時点、現金は入金時点で動く。 CCCが長い会社は売上が伸びるほど現金が減る。 利益と現金は別々に管理する。
使うタイミング
戦略づくりの5プロセスのうち②現状分析で使う。 ファイナンス戦略では必須、事業戦略で成長投資を検討するときにも使う。 とくに「売上は伸びているのに現金が減る」「借入で運転資金を回している」局面で効く。 早すぎる失敗=棚卸資産・売上債権・仕入債務の残高と売上原価が無い段階では日数を出せない(実データが揃うまでは着眼点にとどめ、数字はSTEP4以降で扱う)。 遅すぎる失敗=増産や販路拡大を決めた後にCCCを見ると、成長に必要な運転資金を後から慌てて調達することになる。 成長計画の前にCCCを測り、何日縮めれば自己資金で回るかを方針に含める。
