戦略ファシリテーター

MBO(目標管理) フレームワーク

エムビーオー

上司と部下が対話で合意した目標を本人が自ら管理する仕組み。 参加により当事者意識と成果を引き出す目標管理の考え方。

全社目標を、本人が参加して合意した個人目標につなぐ。合意した目標は、本人が自ら管理する。

MBOの図。経営ビジョン・全社目標から、チーム目標、個人目標へつなぐ3階層全社チーム個人経営ビジョン・全社目標先に明示し、上位の軸を合わせるチーム目標全社目標への貢献個人目標本人が起案・合意個人目標数値・期限・水準チーム目標抜け漏れ・重複なく個人目標自己統制で進捗管理個人目標期末に自己評価

上司は押し付けず、部下自身に起案させて対話で合意する。個人目標が積み上がって全社目標に届くか、縦横で点検する。

用途

MBO(Management by Objectives、目標管理)の目的は、経営が掲げるビジョンや全社目標を、現場の一人ひとりが「自分の目標」として腹落ちさせ、自律的に達成へ動く状態をつくることにあります。 上から数字を割り当てる管理では、担当者は「やらされ仕事」と感じ、達成しても組織全体の方向とズレが生じがちです。 MBOでは、上司と部下が対話しながら、全社目標に貢献する個人・チーム目標を本人参加で合意します。 合意した目標は本人が主体的に管理し、達成度を自ら振り返る(自己統制)ため、当事者意識・納得感・成果責任が同時に高まります。 ①ビジョン工程では、抽象的な理想像を「誰が・何を・どこまで」という測れる目標へ落とし込み、経営目標と個人目標を一本の線でつなぐ土台として機能します。

使い方

  1. 全社の方向を共有する:経営ビジョン・年度方針・全社目標を先に明示し、各人の目標がどこに貢献すべきかの上位軸を合わせる(ここがズレると個人目標も総崩れになる)。
  2. 本人参加で目標を設定する:上司が押し付けず、部下自身に「この方針に対し自分は何を・どこまでやるか」を起案させ、対話で合意する。 数値・期限・水準を具体化し、測れる形にする。
  3. 目標を上位とひも付け整合を取る:個人目標が積み上がると全社目標に届くか、方向が一致しているかを縦横で点検する(貢献の抜け漏れ・重複をなくす)。
  4. 自己統制で進捗を管理する:達成度は本人が主体的にモニタリングし、上司は支援・軌道修正の相談役に回る。 期中に環境が変われば目標を見直す。
  5. 期末に達成度を本人が振り返る:結果と要因を自己評価し、次期の目標設定と育成につなげる(評価のためだけの数字合わせにしない)。

適用例

B2B向けSaaS「勤怠管理クラウド」を提供する社員18名の中小企業を例にします。 経営ビジョンは「2年で解約率を下げ、安定した月次収益基盤をつくる」。 全社目標としてMRR(月次経常収益)を現状400万円→翌年度末600万円(+50%)に置きました。 ここから各担当が本人参加で目標を起案します。 営業担当A:新規契約を月8社→月12社(客単価平均2.5万円/月)。 カスタマーサクセス担当B:月次解約率を3.0%→1.8%(既存200社の維持でMRR約240万円/月、解約による目減りを月7.2万円→月4.3万円に圧縮)。 マーケ担当C:問い合わせ数を月40件→月60件、商談化率25%維持。 押し付けなら「とにかく新規を取れ」で終わりますが、MBOではBが「新規より解約を止める方が効く」と自ら気づき、オンボーディング改善を自分の目標に組み込みました。 結果、全個人目標を積み上げるとMRR約585万円(目標比97.5%)に届く設計となり、経営目標と現場目標が一本でつながりました。

よくある誤解・つまずき

  • 「MBO=ノルマ管理・人事評価制度」と誤解されがちですが、本来は上司と部下の対話による目標設定と本人の自己統制が核です。 評価のための減点材料として運用すると、達成しやすい低い目標ばかり出てくる(目標の萎縮)逆効果を招きます。
  • 「目標さえ数値化すれば良い」と考えるのも落とし穴です。 上位のビジョン・全社目標とひも付いていない個人目標は、達成しても組織の成果につながりません。 個々の目標が積み上がって全社目標に届く縦の整合が前提です。
  • 「一度決めたら期末まで変えない」も誤りです。 環境変化に応じて期中に目標を見直すのが自己統制の本旨で、放置すると形骸化した数字だけが残ります。

使うタイミング

①ビジョンを言語化し、経営目標と個人・チーム目標をつなぎたい段階で有効です。 早すぎる失敗パターンは、そもそも全社ビジョンや方針が定まっていない状態でMBOだけ導入するケース。 上位軸がないため個人目標がバラバラになり、頑張っても方向が揃いません。 逆に遅すぎる失敗は、戦略やアクションプランをすべて決め切った後に「評価するためだけ」に後付けで目標を割り振るケースで、本人参加も納得感もなく、やらされ仕事のノルマ管理に堕します。 ビジョンが固まり、これから全社目標を各人の目標へ落とし込む局面が最適です。

出典

ピーター・ドラッカー現代の経営

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