戦略ファシリテーター

両利きの経営 用語

りょうききのけいえい

既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を同時に追求し、短期の稼ぎと長期の成長を両立させる経営の考え方。

既存事業を磨く「深化」と、次の柱を試す「探索」を同時に回す。評価基準・人材・文化が違うので、切り分けてトップが橋渡しする。

両利きの経営の対比。既存事業の深化と新規事業の探索深化(exploitation)いま利益を生む既存事業を磨き込む改善・効率化・品質向上キャッシュを稼ぐ短期の稼ぎ探索(exploration)まだ見えない次の柱を試す実験・学習・新市場開拓将来の収益源をつくる長期の成長同時に両方回す求められる評価基準・人材・組織文化が違う。意図的に切り分けて資源配分し、経営トップが橋渡しする

主力事業が単月黒字にも届かない立ち上げ期は、探索に資源を割くと共倒れになりやすい。潤沢な余力があって初めて成立する。

説明

両利きの経営とは、いま利益を生む既存事業を磨き込む「深化(exploitation)」と、まだ見えない次の柱を試す「探索(exploration)」を、片方に偏らず両方同時に回す経営の姿勢を指す。 深化は改善・効率化・品質向上でキャッシュを稼ぎ、探索は実験・学習・新市場開拓で将来の収益源をつくる。 両者は求められる評価基準・人材・組織文化が異なるため、意図的に切り分けつつ経営資源を配分し、経営トップが橋渡しすることが要点となる。

適用例

従業員30名のB2B向けSaaS企業を例にとる。 既存の受託開発事業が年商2.4億円・営業利益率18%(営業利益4,320万円)で安定している一方、自社サブスク製品(ARR=年間経常収益3,000万円)は成長余地が大きい。 ここで「深化」として受託の見積もり工程を標準化し、利益率を18%→22%へ改善(2.4億円×4ポイント=年間+960万円の利益)。 同時に「探索」として、社員6名(全体の20%)と年間予算1,500万円を新サブスク機能の実験に配分する。 深化で稼いだ利益の一部を探索へ再投資する形だ。 探索の評価は売上ではなく「有料転換率が2%→5%に上がったか」という学習指標で測る。 2年後、探索側のARRが3,000万円→8,000万円へ伸びれば、受託依存(全社売上の約90%)を約75%へ下げられ、片方が不調でも会社が傾きにくい構造になる。 ここで探索側にも受託と同じ「初年度黒字」を求めると芽が摘まれる——評価軸を分けることが両利きの肝である。

よくある誤解・つまずき

  • 「新規事業をやること」自体が両利きだと誤解しやすいが、本質は探索と深化を“同時に・偏りなく”回すこと。 既存事業を疎かにして新規に飛びつくのは、ただの飛び地投資で両利きではない。
  • 探索と深化を同じKPI(売上・利益)で評価してしまう落とし穴。 探索は不確実性が高く、初年度から黒字を求めると芽が育つ前に潰れる。 学習指標(転換率・検証速度など)で測るべき。
  • 組織を分ければ自動的にうまくいくと考えがちだが、探索部門を隔離して放置すると既存の資産・顧客基盤を活かせず孤立する。 経営トップによる資源の橋渡しがなければ機能しない。

使うタイミング

主に②現状分析で既存事業への依存度や成長の頭打ちを把握した後、③戦略方針で「稼ぐ事業」と「育てる事業」の資源配分を決める場面で使う。 既存が好調なうちに次の柱を仕込む中長期の意思決定に有効。 一方、まだ主力事業が単月黒字にも届かない立ち上げ期の企業が無理に探索へ資源を割くと共倒れになりやすく、この段階では深化(=一点集中)を優先すべき。 潤沢な余力があって初めて成立する考え方である点に注意する。

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