サンクコスト 用語
すでに支払い済みで、これから何を選んでも取り戻せない費用のこと。 将来の意思決定では判断材料にしないのが原則。
すでに払って取り戻せない費用は、判断材料にしない。見るのは「これから追加でかかる費用」と「これから得られる利益」だけ。
「ここまで投資したのだから」の心理(サンクコスト効果)が損切りを妨げる。撤退で新たに発生する将来費用(違約金・原状回復)はサンクコストではなく、判断に含める。
説明
サンクコスト(埋没費用)とは、すでに投じてしまい、この先どの選択肢を選んでも回収できない費用・時間・労力のことです。 継続するか撤退するかを決めるとき、正しい判断材料は「これから追加でかかる費用(将来コスト)」と「これから得られる利益(将来リターン)」だけであり、過去に払ってしまった金額は結果に影響しないため、意思決定からは切り離すのが原則です。 ところが人は「ここまで投資したのだから、今やめたら全部ムダになる」という心理が働き、回収不能なコストに引きずられて損な選択を続けてしまいます。 これをサンクコスト効果(コンコルドの誤謬とも呼ばれる)といい、「損切り」ができない典型的な原因になります。 判断の軸を過去から将来へ、そして機会費用(別の使い道で得られたはずの利益)へ移すことが、この罠を外す鍵です。
適用例
従業員15名・年商2億円のB2B向けSaaS企業が、独自開発中の新機能に開発費600万円をすでに投じた場面。 完成まであと400万円かかるが、市場調査で見込める追加売上は年120万円(3年で360万円)と判明した。 ここで「600万円かけたのに今やめたらもったいない」と考えるのがサンクコスト効果。 だが正しい比較は、過去の600万円を除外し「これから払う400万円 対 これから得る360万円」であり、追加投資は40万円の赤字(360万−400万)。 過去費用を無視して初めて「開発中止」が正解と分かる。 さらに機会費用で見ると、この400万円を既存顧客のオンボーディング改善に回せば解約率を月4%→2.8%へ下げられ、年商2億円ベースで年およそ250〜290万円の解約防止効果が見込めた。 過去に引きずられず将来と代替案で比べたことで、40万円の追い銭を避け、より大きな価値を取りに行けた。
よくある誤解・つまずき
- 「これまで投資した分を回収してから判断すべき」という誤解。 回収できない過去費用は将来の結果を1円も変えないため、判断材料に入れた時点で赤字を上塗りしやすい。 見るべきは常に『これから』の費用と利益だけ。
- 「サンクコスト=ムダ遣い・失敗」という誤解。 撤退の意思決定では無視するのが正しいが、それは支出が悪だった意味ではない。 撤退後に『なぜ回収できない投資になったか』を振り返り、次の意思決定に活かすことは別途重要(意思決定では切り離す/学習では切り離さない)。
- 「損切り=諦め・弱さ」という感情的な誤解。 損切りは将来の損失をこれ以上増やさない合理的判断であり、続ける方が『もったいない意識』に流された非合理な選択になりうる。 撤退基準を先に数字で決めておくと感情に流されにくい。
使うタイミング
主に⑤実行・振り返りの局面や、③戦略方針・④アクションプランで既存の投資・事業・施策を「続けるか/やめるか」判断する場面で効きます。 開発中プロジェクトの継続可否、赤字事業からの撤退、効果の出ない広告や在庫の見切りなど、過去の投資額が大きいほど『もったいない』心理が強く働くため意識的に切り離す必要があります。 使い方の勘所は、判断の前に「これまでいくら使ったか」ではなく「これから追加でいくらかかり、いくら得られるか」を紙に書き出すこと。 一方、契約上のペナルティや原状回復費用など『撤退すると新たに発生する将来費用』はサンクコストではなく判断に含めるべきで、この線引きを誤ると「何でも切ればよい」という乱暴な結論に陥るため注意します。
