戦略ファシリテーター

サンクコスト 用語

サンクコスト

すでに支払い済みで、これから何を選んでも取り戻せない費用のこと。 将来の意思決定では判断材料にしないのが原則。

すでに払って取り戻せない費用は、判断材料にしない。見るのは「これから追加でかかる費用」と「これから得られる利益」だけ。

サンクコストの対比。過去に払った回収不能な費用は判断から切り離し、将来の費用と利益だけで判断する過去(サンクコスト)判断材料にしないすでに投じた費用・時間・労力どの選択肢を選んでも回収できない「もったいない」に引きずられない将来判断材料はこれだけこれから追加でかかる費用これから得られる利益撤退で新たに発生する費用も含める

「ここまで投資したのだから」の心理(サンクコスト効果)が損切りを妨げる。撤退で新たに発生する将来費用(違約金・原状回復)はサンクコストではなく、判断に含める。

説明

サンクコスト(埋没費用)とは、すでに投じてしまい、この先どの選択肢を選んでも回収できない費用・時間・労力のことです。 継続するか撤退するかを決めるとき、正しい判断材料は「これから追加でかかる費用(将来コスト)」と「これから得られる利益(将来リターン)」だけであり、過去に払ってしまった金額は結果に影響しないため、意思決定からは切り離すのが原則です。 ところが人は「ここまで投資したのだから、今やめたら全部ムダになる」という心理が働き、回収不能なコストに引きずられて損な選択を続けてしまいます。 これをサンクコスト効果(コンコルドの誤謬とも呼ばれる)といい、「損切り」ができない典型的な原因になります。 判断の軸を過去から将来へ、そして機会費用(別の使い道で得られたはずの利益)へ移すことが、この罠を外す鍵です。

適用例

従業員15名・年商2億円のB2B向けSaaS企業が、独自開発中の新機能に開発費600万円をすでに投じた場面。 完成まであと400万円かかるが、市場調査で見込める追加売上は年120万円(3年で360万円)と判明した。 ここで「600万円かけたのに今やめたらもったいない」と考えるのがサンクコスト効果。 だが正しい比較は、過去の600万円を除外し「これから払う400万円 対 これから得る360万円」であり、追加投資は40万円の赤字(360万−400万)。 過去費用を無視して初めて「開発中止」が正解と分かる。 さらに機会費用で見ると、この400万円を既存顧客のオンボーディング改善に回せば解約率を月4%→2.8%へ下げられ、年商2億円ベースで年およそ250〜290万円の解約防止効果が見込めた。 過去に引きずられず将来と代替案で比べたことで、40万円の追い銭を避け、より大きな価値を取りに行けた。

よくある誤解・つまずき

  • 「これまで投資した分を回収してから判断すべき」という誤解。 回収できない過去費用は将来の結果を1円も変えないため、判断材料に入れた時点で赤字を上塗りしやすい。 見るべきは常に『これから』の費用と利益だけ。
  • 「サンクコスト=ムダ遣い・失敗」という誤解。 撤退の意思決定では無視するのが正しいが、それは支出が悪だった意味ではない。 撤退後に『なぜ回収できない投資になったか』を振り返り、次の意思決定に活かすことは別途重要(意思決定では切り離す/学習では切り離さない)。
  • 「損切り=諦め・弱さ」という感情的な誤解。 損切りは将来の損失をこれ以上増やさない合理的判断であり、続ける方が『もったいない意識』に流された非合理な選択になりうる。 撤退基準を先に数字で決めておくと感情に流されにくい。

使うタイミング

主に⑤実行・振り返りの局面や、③戦略方針・④アクションプランで既存の投資・事業・施策を「続けるか/やめるか」判断する場面で効きます。 開発中プロジェクトの継続可否、赤字事業からの撤退、効果の出ない広告や在庫の見切りなど、過去の投資額が大きいほど『もったいない』心理が強く働くため意識的に切り離す必要があります。 使い方の勘所は、判断の前に「これまでいくら使ったか」ではなく「これから追加でいくらかかり、いくら得られるか」を紙に書き出すこと。 一方、契約上のペナルティや原状回復費用など『撤退すると新たに発生する将来費用』はサンクコストではなく判断に含めるべきで、この線引きを誤ると「何でも切ればよい」という乱暴な結論に陥るため注意します。

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